【取組紹介Vol.19】ゆるやかに、途切れさせない 集落活動センターなかやまの取り組み【後編】

  • HOME
  • 【取組紹介Vol.19】ゆるやかに、途切れさせない 集落活動センターなかやまの取り組み【後編】
掲載日 : 2026/03/03

今回は「集落活動センターなかやま(中山を元気にする会)」のインタビュー後編です。後編では、広報誌配布を通じた見守り活動、「おしゃべりバス」や「コミュニティカフェ よってん屋」といった交流の場づくり、高知大学生との連携、そして「現状維持」という言葉に込められた思いをご紹介します。

 

※前編はこちらからご覧いただけます。


後編サムネイル

「日本遺産ゆずロードミュージアム」を紹介する安田町ふるさと応援隊(集落支援員)の佐竹さん

 

===

集落活動センターなかやま(中山を元気にする会)

高知県安田町中山地区にある「集落活動センターなかやま」は、2013(平成25)年に開設されました。運営母体である「中山を元気にする会」は約20年前に発足。廃校となった中山小中学校の一部を改修し、中山地区の拠点として活動を始めました。その後、残りの部分を改修し、「安田町多目的交流センターなかやま」としてリニューアルオープン。

===

 

「高知家地域共生社会」では、介護や子育て・就労困難者のサポートなど、分野を超えた包括的な支援体制の整備を進めています。その実現に向けて取り組みを行う県内各地の実践事例をご紹介します。

 

毎月届ける広報誌が、地域の「見守り」につながっていく

-毎月、広報誌を全戸配布されているそうですね。

佐竹さん:もともとは集落活動センターができた時に、地元の人に活動を知ってもらうために先代の「安田町ふるさと応援隊」が始めたもので、12年くらい続いています。

広報誌自体も月1回、僕が作っています。大変ですが、今はAIなどもあるので、意外と負担にはなりません。中山地区で起こった出来事やイベントを記事にしていますね。

 

-配布しながら気づくことも多いのではないでしょうか。

佐竹さん:そうなんです。日中は皆さん仕事に行っていますが、たまたま出会った畑にいるおばちゃんやおじさんに挨拶するだけでも顔を覚えてもらえる。おばあちゃんの相談に乗ったり、何気ない質問に答えたり。人間関係もわかってきますし、認知症の兆候に気づくこともあります。

ポストに郵便物がたまっていないか確認したり、入院されているといった情報も集まってきたり。何か解決ができるわけではないですが、情報の共有はできます。この見守りは、すごく重要だと思っています。

 

卒業式以来、数十年ぶりの再会が生まれた


後編2

「おしゃべりバス」に乗り込む参加者のみなさま

 

-「おしゃべりバス」という取り組みがあると伺いました。

佐竹さん:もともとは「お買い物バス」という名前でした。免許を返納して移動手段のない方のために始まったのですが、町のデマンドバスなどが整備されて役割を終えまして。でも「再開して」という声があって、おしゃべりしながら出かける「おしゃべりバス」として復活したんです。年3回実施していて、「むろと廃校水族館」などまで遠出することも。平均年齢80歳くらいの方が11人ほど参加しています。

 

-「コミュニティカフェ よってん屋」も人気だそうですね。

佐竹さん:地域の女性たちが営んでいるカフェです。ゆずの繁忙期以外は毎月開催していて、看板メニューの山芋シフォンケーキは毎回完売です。このカフェで、卒業式以来数十年ぶりに再会したという地元の方がいたんです。おしゃべりバスでも同じようなことがありました。こういう場があることで、人と人がつながるきっかけが生まれるんだと実感したエピソードのひとつですね。

 

「これがなかったら家から出てこない」——大学生が届ける活力


後編3

高知大学の学生とともにつくる「日本遺産ゆずロードミュージアム」

 

-高知大学との連携についても教えてください。

佐竹さん:この施設の2階に安田町と連携協定を締結している大学の学生が使用できるサテライト教室があって、高知大学の学生たちが毎年、山芋(自然薯)の植え付けや収穫体験に来てくれます。地域のお年寄りから昔の暮らしを聞き取る「地域学」の実習も行っていますね。そして、年に1回、夏にはインドネシアや台湾の学生も来て、郷土料理体験や浴衣を着る体験もしています。

 

-学生さんたちが来ることで、地域の方々に変化はありますか。

佐竹さん:めちゃくちゃありますよ!夏に来る学生のために手作りのクッションを毛糸で編んでいる方もいて、すごく楽しみにしてくださっています。地区の女性部の方々も「もうしんどい、来年はやらない」って言うんですけど、大学生が来るとなると、朝早くから料理を作ってくれる。「これがなかったら家から出てこない」という方もいます。

 

小学4年生の体験が、中学2年生で実を結んだ

-前編で伺った「なかやま山芋フェスタ」では、中学生も出店されたそうですね。

佐竹さん:地元の安田中学校2年生8人が、ゆず餡入りの大判焼きを販売して、100個が約25分で完売しました。実はこの子たちは、小学4年生の時に唯一、この地区で山芋の植え付け体験ができた学年なんです。植え付けの季節の5月は雨が多くて、例年は授業ができないことが多い。でも、この子たちの年だけできた。その子たちが大きくなって、また山芋に関わってくれています。続けてきてよかったなと思いますね。

 

無理をしない、急がない。「現状維持」に込めた思い

-これから新たに始めたいことはありますか。

佐竹さん:目指すべき姿は“現状維持”です。その一言に尽きます。

基本的に安田町は農村なんです。農業で生計を立てていて、年間のサイクルがある。そこにITなどを持ち込んでも無理が生じてしまう。無理をせずに、ゆったりとした変化をしていけばいい。何かやっている時に「ちょっと手伝うよ」って来てくれるのが一番ありがたいんです。ちょっとでも交流人口が増えて、「なんか若い人が来るね」っておばちゃんが言ってくれたら、それでいいんじゃないかなと思っています。

 

-「中山を元気にする会」に参加したい場合は、どうすればいいですか。

佐竹さん:誰でも入れます。一緒にやっていきたいという人なら、誰でも歓迎ですよ。

 

インタビューの後、施設2階の「日本遺産ゆずロードミュージアム」を案内していただきました。佐竹さんが3Dプリンターで制作したゆずのオブジェや、高知大学の学生たちと一緒に作り上げた展示物など、手作りならではの温かみがありながら見応えのある空間でした。今回、印象に残ったのは、新しい技術を柔軟に取り入れながら、限られた人数でも地域を盛り上げようとする姿勢です。人口減少が進む中でも、工夫次第でできることがある。そんな可能性を感じました。

「現状維持」という言葉を、佐竹さんは何度も口にされました。それは立ち止まることではなく、「途切れさせない」ための挑戦なのだと思います。ご協力いただいた皆さま、ありがとうございました。

 

記事執筆:是永 裕子

 

▶ 関連記事はこちら → [取り組み記事一覧へ]



PAGE TOP