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- 【取組紹介Vol.17】地域とともに育つ“未来を担う”学生たち 「高知健康科学大学」の取り組み【後編】
今回は「高知健康科学大学(高知市)」のインタビュー後編です。香南市と連携して20年以上にわたり体力測定事業を続けてきた同大学は、地域の健康づくりと学生の学びが交わる場を大切にしています。
後編では、体力測定当日の様子や、学生の関わり、そしてこれからの展望についてお話を伺いました。
※前編はこちらからご覧いただけます。
参加者も学生も笑顔あふれる「体力測定」
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高知健康科学大学
理学療法士・作業療法士の養成を目的に長年教育を行ってきた「土佐リハビリテーションカレッジ」を前身として設立し、2024(令和6)年4月に開学、第1期生を迎えてスタート。専修学校から大学への移行を進めながら、地域に根ざした人材育成に取り組んでいます。
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「高知家地域共生社会」では、介護や子育て・就労困難者のサポートなど、分野を超えた包括的な支援体制の整備を進めています。その実現に向けて取り組みを行う県内各地の実践事例をご紹介します。
自ら学び、地域とつながる学生たち
他大学も連携して行った体力測定
-学生はどのように体力測定に関わっているのでしょうか。
1年生から4年生まで、幅広い学年の学生がボランティアとして参加しています。
本学には「未来を彩る7つのコース」という「地域・高齢者」「スポーツトレーニング」「起業・新領域」など、カリキュラムの枠を超えたさまざまな成長の場があります。
学生の自主性に任せており、すべて“自由参加”なのですが、全学生のうち約8割が7つのコースのいずれかに参加しているんです。
体力測定は「地域・高齢者」コースの学生が対象ですが、夏休み期間にもかかわらず、事前練習から当日の運営までしっかり取り組んでくれました。
また、今回の体力測定には、高知工科大学や奈良学園大学の教員も参加しています。こうした大学間の連携も、大学に移行したことによって広がった取り組みのひとつです。
-今回、卒業生も参加されているそうですね。
はい、現在は病院で勤務している卒業生が、休日を利用して参加してくれています。中には、在学中に地域での研究活動を希望していたものの、コロナ禍で実現できなかったことから、「やはり地域の取り組みに関わりたい」という想いで来てくれた卒業生もいます。
今回に限らず、卒業生が、学生時代の経験を生かして地域で活動を始めたという話を聞くことも増えました。
例えば、病院に勤務しながら自ら体操教室を立ち上げた卒業生や、ボランティアではなく仕事として地域に出ている卒業生もいます。
-参加された高齢者の方々の反応はいかがですか。
学生が加わると、会場の雰囲気が一気に和らぎ、会話も自然に弾みます。教員だけでは生まれない温かい空気が広がり、参加者の皆さんもとても楽しそうでした。
体操教室など他の取り組みでも同様で、学生の存在があるだけで場の雰囲気が明るくなります。
-体力測定を長年続けてきて、高齢者の健康課題に変化はありますか。
団塊の世代の高齢化が進み、個別志向が高まっていると感じます。以前は集団で「百歳体操」をするような形が主流でしたが、今は個別にジムに通うなど、自分に合った方法を選ぶ方が増えています。
身体機能の維持だけでなく、認知症対策や社会的つながりへの関心も高まっていますね。今後10年でさらにニーズが多様化していくのではないかと感じています。
地域ともっとかかわりたい——体力測定に参加した学生の想い
インタビューに協力してくれた1年生の山本さん(左)岩原さん(真ん中)、3年生の西原さん(右)
会場では、測定を担当した学生の皆さんにもお話を伺いました。
-参加しようと思ったきっかけを教えてください。
(1年生 山本さん)
香南市がどのように地域の方と健康づくりに取り組んでいるのか知りたいと思い参加しました。地域活性化にも興味があります。
(3年生 西原さん)
コミュニケーションに苦手意識があり、それを払しょくしたいという思いがありました。また、地域の方と関わる活動に興味があるというのも参加の理由です。
私自身、普段から住んでいる地域の防災訓練などで高齢者の方と接する機会が多いので、他の地域の方のお話を聞いてみたいという気持ちもありました。
-体力測定に参加してみて、印象に残ったことや感じたことはありますか。
(1年生 岩原さん)
高齢者の方と楽しくお話ししながら交流できたのがうれしかったです。測定の方法や内容についても知ることができ、とても良い経験になりました。
(3年生 西原さん)
実習に行っても会話に苦手意識がありましたが、今日は参加者の方と楽しく話を弾ませることができ、自信につながりました。こうした機会を通して、実習に向けて自分の課題を少しずつ克服していきたいと感じています。
そして、若い人が地域に関わることで、一緒に運動などを楽しむ場をつくっていけたらいいなと思いました。
地域と歩むことで、学びもキャリアも広がる
-大学として、今後どのような姿を目指していきたいとお考えですか。
本学では「未来健康創造研究センター」と「地域連携支援センター」という2つのセンターを立ち上げ、地域の方が気軽に利用できる場づくりも進めているところです。
今後は新図書館の開放も計画しており、大学を地域の日常に溶け込む存在にしていきたいと考えています。
-その実現に向けて、どのような取り組みを進めていく予定でしょうか。
例えば、高知市地域包括支援センターと連携した授業などで、学生が地域の課題に直接触れる機会を増やしていこうと考えています。孤立や孤独といったテーマにも目を向け、地域で必要とされる力をつけていきたいですね。
学生たちは「誰かの役に立ちたい」という気持ちが強く、医療機関だけでなく、化粧品会社で高齢者のメイクに携わる、スポーツの現場に関わるなど、リハビリテーションの知識を活かした多様なキャリアの可能性を模索しています。
「高知健康科学大学」は略して「高健大(こうけんだい)」としていますが、これには、地域に“貢献”するという想いも込めているんです。
これからも、地域のハブとなれるよう、取り組みを進めていきます。
-今回の取材で特に印象に残ったのは、学生たちのまっすぐなまなざしと、キラキラとした笑顔です。地域の方々と自然に言葉を交わしながら活動に取り組む姿からは、力強さと温かさが伝わってきました。
高齢者の皆さんも学生との交流を楽しみながら測定に臨み、会場には終始和やかな空気が流れていました。
地域の中で実践を重ねる学生たちの姿を見ていると、まさに、地域に“貢献”する若い力が育っていると感じます。同時に、高知型地域共生社会の実現に向けて欠かせない地域づくりの担い手の育成も着実に進んでいることを実感しました。
地域とともに未来を築く拠点として、「高知健康科学大学」は、これからも温かなつながりを育む場となるでしょう。
ご協力いただいた皆さま、ありがとうございました。
記事執筆:是永 裕子
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