【取組紹介Vol.15】 “そのまま”でいられる居場所をめざして 青い空ぽっこぷぅ~んの取り組み【後編】

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掲載日 : 2025/10/06

今回は「青い空ぽっこぷぅ~ん(幡多郡大月町)」のインタビュー後編です。「青い空ぽっこぷぅ~ん」は、引きこもりや不登校に悩む若者たちを支えるため、地域と連携しながら日々取り組みを続けています。後編では、支援に込めた想いや、地域とのつながり、そして今後の展望についてお話を伺いました。

 

※前編はこちらからご覧いただけます。

 


後編1

ひきこもりについて語る佐伯さん(提供:青い空ぽっこぷぅ~ん)

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(青い空ぽっこぷぅ~ん(ひきこもり等支援任意団体)
高知県幡多郡大月町で活動する「青い空ぽっこぷぅ~ん」は、ひきこもりや不登校、発達に特性のある方やその家族を支えるために、2015(平成27)年から活動を続けている民間団体です。「ひきこもる本人は無理でも、せめて家族だけでも心を落ち着ける居場所を」という想いのもと、町内外の支援機関や行政とも連携し、世代や立場を超えた関係づくりを実践しています。
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「高知家地域共生社会」では、介護や子育て・就労困難者のサポートなど、分野を超えた包括的な支援体制の整備を進めています。その実現に向けて取り組みを行う県内各地の実践事例をご紹介します。

 

 「間違っても笑っていい」名前に込めた思い


前編2

子ども達との豆まきの様子(提供:青い空ぽっこぷぅ~ん)

 

-ユニークな団体名ですが、「青い空ぽっこぷぅ~ん」という名前にはどんな意味が込められているのでしょうか。

佐伯さん: 最初は「青い空」という名前を考えていたんです。でも、子どもって「とうもころし(とうもろこし)」や「ぶっころり(ブロッコリー)」みたいに言葉を言い間違えることがありますよね。それは、ちょっとしたことですが、周りが笑って受け止めてくれると、本人も安心できる。そんな空気感を大事にしたくて、「青い空」と「ぽっこぷぅ~ん(ポップコーン)」をくっつけた名前にしました。
「ひきこもり」という言葉も、本来は“状態”を表すだけのもの。しかし、まるでその人の人格や価値を表すかのように受け止められてしまうことがある。それってすごく残念だと思うんです。そこで、名前に「今の状況を笑い飛ばしていいんだよ」というメッセージを込めています。

 

スタッフの原体験が支える、今の活動

-活動を支えている皆さん自身の経験について教えてください。

谷さん:私はもともと教員で、娘自身が不登校になったこともありましたし、学校の中でも生きづらさを抱える子をたくさん見てきました。
でも、当時は支援の制度も乏しくて、家庭だけで抱え込まざるを得ない状況が多かった。教員としても、どうにもできない無力感を感じることが多くて…。それが今の活動の原点につながっています。

佐伯さん:じつは僕は、以前10年以上、ひきこもったり少し短期パートをしてみたりしていたんです。なかなか社会に出られませんでしたが、「放課後子ども教室を手伝ってみない?」と声をかけてもらったことが転機となって、少しずつ外に出られるようになりました。
その経験から、「周りの大人が何気なくかけるひとこと」が、すごく大きな意味を持つことを知りました。ひきこもる方って、真面目で頑張りすぎる人に多くて、親も同じようにこうじゃなきゃいけないみたいなケースが多い。だからこそ周囲に頼りづらくて、孤立してしまうんです。
今は「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」のピアサポーター資格も取得し、かつての自分のような人に寄り添う活動をしています。

 

-これまでのご経験が、日々の活動に活かされているのですね。

佐伯さん:今の子どもたちは放課後に遊ぶ場所も人も少なくて、孤立しやすい環境にあります。だからこそ、僕たちが“地域の大人”として気軽に話しかけたり、名前を覚えて声をかけたりするようにしています。
「いつでも開いてるから、おいでね」と、構えず話しかけられる関係性を大事にしていますね。子どもたちの名前を全員覚えて接するようにしているのは、そうした積み重ねが安心感につながると思っているからです。

谷さん: 私は、「この人たちの笑顔が見たい」という想いで活動しています。そして、“1cm”でも前に進むきっかけになりたいですね。
佐伯さんは“甘えられる存在”、私は時にピシッと言う“ちょっと怖い存在”として、役割分担ができているのかなと思います。
町の規模が小さい分、社会福祉協議会や行政と顔の見える関係を築きやすいのは大きなメリットですね。子どもたちにとっても、大人にとっても、「困ったときに思い出せる場所」になれたら嬉しいです。

 

目指すのは、誰もが立ち寄れる“地域の拠点”

-今後は、どのようなことに取り組もうと考えられているのでしょうか。

谷さん:一人で静かに過ごしたい方もいれば、誰かと話したい方もいる。いろんな居場所のかたちに応えられる空間にしていきたいと思っています。そして、少しでも何か“役割”のある仕事ができるような場もつくっていきたいです。いずれは法人化して、「ぽっこぷぅ~ん」が地域の拠点として続いていけたらと考えています。

佐伯さん:僕の夢は、「青い空ぽっこぷぅ~ん」を“地域の大きなホテル”みたいな場所にすることです。宿泊や食事もできて、駄菓子屋さんもあって、お年寄りが店番をする。
子どもから高齢者まで、誰でも自然に立ち寄れるような、そんな居場所を地域の中につくれたら最高ですね。

 

地域と交わる「夕涼み会」で感じた温かさ


後編3

大月町商工会主催「弘見夕涼み祭」に「青い空ぽっこぷぅ~ん」も出店

 

-2025(令和7)年8月に開催された、大月町商工会主催の「弘見夕涼み祭」に、「青い空ぽっこぷぅ~ん」も出店していたため、当日取材させていただきました。

このお祭りへの参加は今回で3回目とのこと。「地域の方に団体の存在を知ってもらう機会でもあり、活動を支えてくれている地域に少しでも恩返しができれば」という想いで、毎年継続的に出店されています。会員の皆さんにとっても、地域の人とふれあう貴重な経験になっているそうです。
当日は、ポップコーンやわたがし、ドリンクなどを販売。浴衣姿の親子連れや地域の方々がにぎやかに行き交うなか、「ぽっこぷぅ~ん」のブースでは、参加していた会員の方々が互いに声をかけ合いながら、元気に接客していました。
特に印象的だったのは、佐伯さんが会場を訪れた子どもたち一人ひとりの名前を自然に呼びかけていたこと。その姿から、日頃からの丁寧な関わりと信頼関係が見て取れ、地域にしっかりと根を張って活動されている様子が伝わってきました。

 

-今回のお話で特に印象に残ったのは、「そっと寄り添うこと」を大切にされている姿勢です。
スタッフの皆さん自身が、過去の経験を土台に、会員の皆さんや子どもたち、地域の人と温かく、まっすぐに関係を築いている。その姿には、「誰かのために」ではなく「一緒に前に進もう」という対等なまなざしがありました。
確実に信頼を重ね、つながりを育てている「青い空ぽっこぷぅ~ん」の取り組みは、これからもきっと多くの方にとっての“一歩”になっていくでしょう。
「青い空ぽっこぷぅ~ん」の皆さま、温かいお話をありがとうございました。

 

記事執筆:是永裕子

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