【取組紹介Vol.9】地域とつながり、親子を支える。子育て支援センター「いるかひろば」の取り組み【前編】

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掲載日 : 2025/06/16

今回は高知家地域共生社会推進宣言団体である「子育て支援センター いるかひろば(高知市)」にインタビューを行いました。理事長の土居さんに、いるかひろばの活動内容や子育て親子へ寄り添ううえで大切にしている考え方についてお話を伺いました。

 

※後編はこちらからご覧いただけます。


いるかひろば理事長の土居さん

いるかひろばの取り組みについて語る理事長の土居さん

(写真:ことのは舎)

 

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子育て支援センター いるかひろば

2007(平成19)年、港孕保育園の建て替えに伴い、同園敷地内に子育て支援センターを設立。

その後、2019(令和元)年に「NPO法人いるかひろば」立ち上げとともにセンターの事業を引き継ぎました。

子ども家庭庁が推進する地域子育て支援拠点事業に沿って、(1)子育て親子の交流の場の提供と交流の促進 (2)子育て等に関する相談・援助の実施 (3)地域の子育て関連情報の提供 (4)子育て及び子育て支援に関する講習等の実施という4つの事業を軸に、とことん寄り添った支援を実践しています。

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「高知型地域共生社会」では、介護や子育て・就労困難者のサポートなど、分野を超えた包括的な支援体制の整備を進めています。その実現に向けて取り組みを行う県内各地の実践事例をご紹介します。

 

「気持ちに寄り添う支援を」いるかひろばの事業内容


いるかひろば窓

いるかひろばの入り口。ロゴマークがあたたかく出迎えてくれます。

(写真:ことのは舎)

 

-はじめに、子育て支援センター いるかひろばの成り立ちについて教えてください。

子育て支援センターいるかひろばは2007(平成19)年、港孕保育園の建て替えに伴って誕生しました。当時の私は保育園の臨時職員として働いており、センター開設にあたって異動したのが子育て支援事業に携わり始めたきっかけです。

異動してすぐは「子育て支援センターって何をすればいいのだろう」と考えることからスタートしました。しかし、続けるうちに「私がやりたかったのはこれだ」と感じ、徐々に「利用者一人ひとりのニーズに沿った支援をしたい」と考えるようになっていきました。

そこで2019(令和元)年秋にNPO法人いるかひろばを立ち上げ、子育て支援センター事業を引き継いで今に至ります。現在は年間1000件以上の相談が寄せられています。

 

-いるかひろばが掲げる理念と、そこに込められた想いについてお聞かせください。

いるかひろばは「利用者の気持ちに添った支援〜地域とともに子育てを〜」という理念を掲げています。子育てに関する悩みや不安はそれぞれの家庭やお子さんの状況によって多種多様です。それら一つひとつを丁寧に拾い上げ、私たちにできる支援を届けたいという気持ちが込められています。

 

-この理念が生まれた背景にはどのようなお考えがあるのでしょうか。

保育園で働いていた頃から、私の中には「子どもの裏側には必ず家族や家庭がある」という考えがあったものの、具体的にどういうことなのかうまく説明できませんでした。しかし、子育て支援センターの仕事を通して多くの親子に関わっていくうちに、笑顔で保育園に登園する子や支援センターに来る利用者も、ひとたびお話を聞くと様々な家庭環境の問題を抱えていることがわかってきました。

保護者自身が幼少期に虐待経験があったり、DV被害に遭っている方、パートナーや実家・義実家とうまくいっていない方。また、お子さんに特性があるなどで「この子をどう育てていけばいいのかわからない」といった悩みをたくさんの方が持っていました。

つらい人・困っている人をみんなで支え合える社会に少しでも近づけるために、まずは一人ひとりの心配ごとにフォーカスしたい。そんな考えのもと、いるかひろばでは利用者の皆さんの声に徹底して寄り添う子育て支援を実践しています。

 

多胎児育児を地域で支える、ツインズ プチポワ こうちとの交流

-いるかひろばでは、毎月最終水曜日に多胎児サークル「ツインズ プチポワ こうち」との交流を行っているそうですね。連携が始まった経緯についてお聞かせください。

ツインズ プチポワ こうちは、双子を育てるお母さん3名が立ち上げた子育てサークルです。多胎児育児の大変さや楽しさを共有し、支え合っていくことを目的としています。もともと地域と協働で何かしたいという考えがあったことと、立ち上げメンバーの皆さんはいるかひろばの利用者でしたので、「ぜひ一緒にやりましょう」と声をかけて2年前から交流をスタートしました。

 

-毎月の交流ではどのような内容を行っていますか。

一緒に遊んだり育児相談に乗ることはもちろん、プチポワの皆さんと利用者が情報交換をする場面も見られます。中にはとなりの南国市から双子・三つ子を連れて来てくださる方もいます。インターネットで多胎児サークルを探してたどり着く方や、プチポワからの声がけでいるかひろばにつながった事例もいくつかあります。

また多胎児は食事をするのも一苦労なので、ここでランチを食べる利用者もいます。初めて来たときはお母さんの膝の上を離れなかった子も、私たち職員が関わることでお母さん以外の人が食事をあげても、食べるようになりました。お母さんの肩の荷が少し下りたり、自分の食事をゆっくりと食べられる時間を作れたりしたらいいなと思っています。

 

-「ツインズ プチポワ こうち」との交流日を設けることで訪れた変化があれば教えてください。

プチポワのメンバーが来ることで、双子・三つ子を持つ利用者が安心して相談できる環境づくりにつながっていると思います。実際、交流日には双子や三つ子を連れて来る利用者も多くいます。「双子・三つ子ならではの悩みを相談できる場所がない」と感じていた利用者も、プチポワとつながって交流日に色々な話をすることで、心強さや育児を頑張るパワーを得ているようです。

 

小さな声に耳を傾け、親子の心にとことん寄り添いたい


いるかひろばで思い思いに過ごす利用者。職員への子育て相談も気軽にできる

いるかひろばで思い思いに過ごす利用者。職員への子育て相談も気軽にできる

(写真:ことのは舎)

 

-いるかひろばで実施しているイベントや育児講座にはどのようなものがありますか。

イベントとしては、0歳の集い「ぴよぴよサロン」や毎月第3金曜日に開催する誕生会などがあります。他にも絵本の読み聞かせをする「よちよちランド」や、毎日11時・15時に行う歌と遊びの時間、7月と8月の午前中は水遊びもします。こういった取り組みをきっかけに興味を持って来てくださる方がいればと思い実施しています。
また育児講座では、ベビーマッサージ・ストレッチ体操・栄養士相談・ヨガなど様々な講師を呼んで毎月開催しています。講座の内容は利用者の声から企画したものも多く、講師自身が元利用者というケースもあります。イベントや育児講座は概要を決めて告知していますが、そのとき集まった利用者の悩みにあわせて臨機応変に内容を変える場合もあります。

 

-利用者に心から寄り添う姿勢が伝わってきます。利用者やそのお子さんと関わるときに大切にしていることは何ですか。

利用者が駐車場に来たら、職員が必ず迎えに行きます。お子さんが嫌がらなければ職員が抱っこし、もし嫌がったら荷物を持ってお母さんに抱っこしてもらい部屋まで案内します。そして帰りも同じようにして見送ります。

その理由は、行き帰りの間のちょっとした一言やSOSを見逃さないためです。「昨日の夜、子どもがなかなか寝なくて体調が良くない」とか「パートナーとケンカしてしまった」など、どんな小さなことでも構いません。「よく言ってくれましたね」と受け止め、私たちで何か力になれることがないか探すことを大事にしています。

 

-送迎の間も利用者の様子に気を配り、支援の必要性の有無を見極めているのですね。

お子さんに対しては、ケンカを止めないようにしています。子ども同士のケンカは大事なコミュニケーションだからです。もし我が子がお友達のおもちゃを取ってしまったら、お母さんは「取ったらダメよ、順番でしょう」と言う場合が多いですね。しかしそれは大人の考えです。子どもには子どもなりの考えや行動の理由があるので、それを極力代弁するようにしています。

例えばおもちゃを取られた子が泣いていたら「泣いてるね、どうする?」と取った子に聞きます。そうすると取った子は「いやだ」という。おもちゃを取った子も取られた子も、両方の気持ちを大事にしたいので一方的に「返してあげたら」とは言いません。

それでも収まりがつかないときは、私が全く違うおもちゃを出してきて遊び始めます。すると子どもたちの気が逸れて、いつの間にかケンカが収まります。そういった関わりを大事にしています。

 

前編では、いるかひろばの理念に込められた想いや多胎児サークル「ツインズ プチポワ こうち」との連携、そして利用者との関わりで大切にしていることを伺いました。「利用者の気持ちに添った支援〜地域とともに子育てを〜」という理念が、利用者だけでなくお子さん一人ひとりにまで向けられていることが感じ取れるお話でした。後編では、いるかひろばが取り組む地域との交流や、今後の活動の展望について詳しくお聞きします。


記事執筆・写真:ことのは舎



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