【取組紹介Vol.7】誰もが安心して暮らせる高知市へ。福祉人材の育成や制度の狭間に対応した支援体制 「高知市社会福祉法人連絡協議会」の取り組み<後編>

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掲載日 : 2025/01/27

今回は「高知市社会福祉法人連絡協議会」のインタビュー後編です。協議会が取り組むもう一つの活動「くらしあんしん応援事業」の支援内容と、令和5年度から新たに取り組んでいる人材育成について、高知県社会福祉協議会 地域協働課の馬場さんにお聞きしました。

 

※前編はこちらからご覧いただけます。

 

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高知市社会福祉法人連絡協議会
高知市内に事業所を置く18の社会福祉法人により、平成30年8月に設立された協議会です。令和6年1月現在、20法人が所属しています。高知市内の社会福祉法人が組織の枠を超えてつながり、それぞれの法人が強みを持つ分野等での専門性やこれまで培ってきた経験を最大限に発揮し、住民が安心して暮らせる地域の仕組みを市内にくまなく作っていくための取り組みを行っています。
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高知市社会福祉協議会 地域協働課の馬場さん

「くらしあんしん応援事業」について語る高知市社会福祉協議会 地域協働課の馬場さん

(写真:CRAFT5 Inc.)

 

「高知型地域共生社会」では、介護や子育て・就労困難者のサポートなど、分野を超えた包括的な支援体制の整備を進めています。その実現に向けて取り組みを行う県内各地の実践事例をご紹介します。

 

福祉制度の狭間を埋める「くらしあんしん応援事業」とは


くらしあんしん応援事業

「くらしあんしん応援事業」について(写真:CRAFT5 Inc.)

 

-高知市社会福祉法人連絡協議会が取り組む「くらしあんしん応援事業」の概要について教えてください。

「くらしあんしん応援事業」は、生活困窮者の自立支援を目的とした取り組みです。令和4年度から始まった事業で、現在は試行的に進めながら当協議会の会員法人に様々な意見をいただき、毎年改良を重ねています。
2つの支援の柱があり、1つは総合相談支援として面談や訪問等を通じて相談者の生活課題を本人と一緒に整理し、必要な支援につなげています。もう1つは経済的支援として、最大1万円を給付する「自立支援給付」と、最大4万円の貸し付けを行う「自立支援金」という2通りの支援方法を準備しています。

 

-経済的支援とは、具体的にどのようなものですか。

経済的支援は当協議会の会員である20法人からの拠出金をもとに運営し、自立を妨げる金銭的負担の軽減を目的としています。これまで、就職活動や各種制度利用に必要な証明書代、また緊急一時的な生活費(主にライフラインの復旧など)に対し支援を行いました。こういった費用は現行の福祉制度では担保できない「狭間にある出費」で、これが足かせになって就労に向かえない方もいます。そこを拠出金から補って相談者の自立を促します。

 

-困窮した状態を脱し、自立するための総合的な支援をしているのですね。

それぞれの相談者で状況が異なりますので、個別に相談員がついてヒアリングしたりプランを描いたりしながら、伴走支援をしています。支援期間は人によりますが、早い方は半年ほどで課題を解決して就労に向かう場合もあります。
稼働年齢層だけでなく、年金生活を送る高齢者が経済的に行き詰まっているケースも多く見られます。その場合、まずは経済的支援で課題を解決した後、同じような困窮状態を繰り返さないよう家計改善支援や必要な福祉サービスにつなぐなど、自立した生活ができるように促します。相談者の年齢や状況に応じて就労支援や家計支援など柔軟に組み合わせながら、それぞれの自立に向けた支援を検討します。

 

-「くらしあんしん応援事業」が目指す姿についてお聞かせください。

現在は総合相談と経済的支援の枠組みのみで運営していますが、相談者の中には社会参加の支援を必要とする方もいます。就労だけがゴールではなく、年齢や本人の特性などに応じた柔軟な社会参加が今求められています。
そんな方を地域とつなぐための支援を「くらしあんしん応援事業」の枠組みの中に入れられないか、現在事務局で検討しているところです。具体的には、相談者が当協議会の会員法人の仕事を手伝い、1回あたりお小遣い程度のお金が受け取れる仕組みなどを考えています。実際に県外ではそういった支援メニューを提供している団体もあるため、先行事例を参考にしてますます支援の充実を図るつもりです。

 

専門職の魅力を伝える授業を通して福祉人材を育成


高知福祉専門学校の授業

高知福祉専門学校で授業を行う様子(写真:高知市社会福祉法人連絡協議会)

 

-高知市社会福祉法人連絡協議会では、福祉人材の育成にも力を入れているそうですね。

令和5年度から、当協議会の地域公益活動部会では福祉人材の確保に向けた取り組みを始めました。高知福祉専門学校で授業を行い、専門職とのグループディスカッションなどを通して福祉の仕事の魅力を伝える内容です。
県内では、福祉系の学校を卒業しても一般企業に就職する学生がとても多いのが実情です。せっかく福祉の世界を志したのなら、その世界で活躍する人材になってほしいと考え、授業では児童福祉・障害福祉・高齢者福祉の3分野が幅広く知れるように努めています。

 

-とても素晴らしい取り組みですね。参加した学生からはどのような感想が寄せられましたか。

学生からは「保育士を目指して勉強していたが、高齢福祉の分野にも興味が湧いた」「実習でつまずいた部分に対してアドバイスがもらえて役立った」という感想が寄せられています。
いま全国的に介護人材が不足しており、外国人材に頼る流れもあります。高知県のような地方ではその風潮がさらに顕著になっているため、今後は専門学校生だけでなく中学生・高校生にも対象を広げ、県内で介護・福祉人材を増やすための取り組みを加速させていきたいと思います。

 

地域福祉の明るい未来を目指して

-今後の高知市社会福祉法人連絡協議会の活動において挑戦したいことはありますか。

令和6年度からの新たな取り組みとして、当協議会に加盟している高齢者施設と地元の小学校をつなぐ活動を行っています。ある小学校では児童がアニマルセラピーを学び、保護犬を譲渡する活動をしているのですが、高齢者施設に保護犬を迎え入れることで保護犬を通じて施設と子どもたちがつながっています。
近年の核家族化の影響で、小学生の子どもたちは介護が必要な高齢者と触れ合う機会がほとんどありません。そこで施設見学の際はノーリフティングケアやIT化の取り組みを知ってもらい、介護現場の働き方について理解を促進する取り組みを行っています。
高齢者と実際に関わることで学校からも「児童の気持ちが温かくなる体験ができた」という声をいただいていますので、今後もそういった経験を生み出すための福祉教育活動を継続していきたいと思っています。

 

-様々な関係機関と連携して、高齢者・障害者・子育て世帯などの福祉ニーズに応える高知市社会福祉法人連絡協議会。「誰に言えばいいかわからない」と感じる悩みも、まずは相談という行動をとるのが重要であり、同協議会では相談者がより良い道へ進むために一人ひとりに寄り添った支援をしていることが伝わってきました。馬場さん、お話をお聞かせいただきありがとうございました。


記事執筆:ことのは舎
編集:株式会社CRAFT5



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