【取組紹介Vol.5】会社から社員、そして地域へつながる防災の輪 「高知機型工業株式会社」の取り組み <後編>

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掲載日 : 2024/11/27

「高知型地域共生社会」では、介護や子育て・就労困難者のサポートなど、分野を超えた包括的な支援体制の整備を進めています。その実現に向けて取り組みを行う県内各地の実践事例をご紹介します。
今回は「高知機型工業株式会社」のインタビュー後編です。同社が地域住民に向けた防災・炊き出し訓練を実施する背景には、高い防災意識が根底にあります。社内ではどのような啓発活動をして防災の重要性を伝えているのか、また今後の防災活動における展望について取締役副社長の北さんにお聞きしました。

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高知機型工業株式会社
昭和40年3月、高知市東雲町にて創業し、木型部門・樹脂型部門の事業をスタートさせました。金型、機械木型、シェルモールド、発泡スチロール模型等の設計・製作のほか、3Dスキャナーでのリバースエンジニアリング活用により、図面やデータのない老朽化した現行型の更新製作も手がけます。平成29年12⽉には経済産業省「地域未来牽引企業」に選定されたほか、「健康経営優良法人」にも認定(令和2年~/経済産業省)されています。また、SDGsへの取り組みも積極的に行っています。
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※前編はこちらからご覧いただけます。

 

社員全員が防災担当!高知機型工業が実践する日常の備え


防災・炊き出し訓練の様子

地域向けの防災・炊き出し訓練の様子(写真:CRAFT5 Inc.)

 

-地域に向けた防災訓練活動を続けている御社ですが、高い防災意識を全社で共有するために取り組んでいることはありますか。

社内には地震速報を受信できるFM放送設備を置いており、実際に地震が起こって緊急放送が入るたびに避難訓練をしています。多い時は立て続けに起こることもありますが、平均すると月1回ほどは訓練を実施していると思います。
FMラジオの災害情報が入るのは日常業務の最中で、いつ起こるかタイミングは誰にも予測できません。いわば抜き打ちの避難訓練ですね。放送があれば仕事の手を止めて、工場でガスを使っている場合は元栓を閉め、社員全員で避難します。そして避難の流れや安全点検を行い、何か課題があれば今後の改善方法について話したあと、また業務に戻ります。

 

-避難訓練をそこまで実践的にやっていらっしゃるとは驚きです。そうやって社内で防災のノウハウを蓄積しているのですね。

当社には社員や役員で構成する「安全衛生改善委員会」があり、地域向けの防災・炊き出し訓練や日頃の災害への備えについて、委員のメンバーが中心となって進めています。もともとは工場で行う業務の安全対策活動から始まった委員会でしたが、少しずつ防災の部分も強化してきました。
毎月の工場パトロールでは、高く積み上げているものはないか、地震の揺れで落ちてくるものがないかなどの点検を実施します。委員がチェック結果をまとめ、報告・改善を繰り返しています。これは日常業務の安全を守ることと、防災の面と両方で非常に大事な作業です。

 

-安全衛生改善委員会はどのようなメンバーが所属していますか。

委員は各部署から1名ずつが所属し、役員も含めて合計10名ほどのメンバーがいます。委員長・副委員長が中心となって月1回の会議を行い、イベントなどの準備をします。メンバーは半年間の交代制で、社員みんなが順番に委員を担います。
昔は一人が長く委員を務めたり、1年で交代していた時期もあります。ただ、南海トラフ地震がいつ発生するかわからない状況の中で、みんなが防災訓練の担当者を経験した方がいいという考え方のもと、半年間の任期で交代する形になりました。そうして社員の意識を高めながら、今ようやく全体で分担しながらできるようになってきたと感じます。これを繰り返すことで、より実際の災害時に役立つノウハウが蓄えられるのではと思います。
 

「備えあれば憂いなし」社員全員に防災リュックを配布


防災リュック

配布した防災リュック(写真:CRAFT5 Inc.)

 

-御社の社員の皆さんはかなり防災意識が高いのではと推察しますが、災害では社内だけでなく各家庭の備えも重要になりますよね。

当社は9年前から徐々に太陽光発電や厨房設備を整え、香南市と防災協定を結び、社内で行っていた防災訓練を地域の皆さんにも広げながら活動をしてきました。しかし、肝心の「社員の自宅での防災」ができてないことが最近わかりました。今まで折に触れて「こんな風に備えると良いよ」と伝えてきましたが、忙しかったりきっかけがなかったりして、実際に取り組んでいる社員は少なかったのです。
そこで安全衛生改善委員会の発案のもと、今年から会社で社員一人ひとりに防災リュックを準備し、各自で自宅に持ち帰って災害に備えることにしました。リュックの中身は必要なものを厳選して入れて、災害時の対応をまとめた冊子や物品のリストも入っています。

 

-防災リュックの中身を見て「こういうものが必要なのか」とわかると、家庭での防災意識もグッと高まりそうです。

今後は年に1回、定期的に会社へ防災リュックを持ってきてもらい、中身を点検する時間を持とうと考えています。災害対策で最も重要なことはシミュレーションです。地震が起こったときにどんな行動をすべきか、揺れが収まったらどこに逃げるのか、そのとき何を持って行くといいのか。これらを事前にイメージして備える重要性について、普段から社員に伝えています。

 

「一人ひとりが責任者」防災リーダーを目指す高知機型工業の挑戦


高知機型工業 北副社長

防災意識の向上について語る高知機型工業株式会社 取締役副社長の北さん(写真:CRAFT5 Inc.)

 

-今後も高知家地域共生社会推進宣言企業として活動を続ける中で、強化したいことや挑戦したいことはありますか。


高知家地域共生社会推進宣言

高知家地域共生社会推進宣言(令和6年10月7日)(写真:高知県)

 

当社の様々な取り組みは一度ですべてをやってきたわけではなく、安全衛生改善委員会とともに少しずつ活動を積み上げた結果として今があります。地域に向けた防災・炊き出し訓練も、最初は年配のご夫婦で来てくださり、その次に息子さん夫婦、さらにお子さんたちも来てくれるようになるなど徐々に輪が広がってきました。
今後は太陽光パネルの追加など、防災設備の増強も検討しています。また、当社には防災士の資格を持つ女性社員が2名おり、有資格者を配置したことで令和2年には高知県が認定する「南海トラフ地震対策優良取組事業所」で5つ星を獲得しました。
災害時は地域の皆さんと協力して乗り切らなければなりません。いざという時に迅速に行動できるよう、これからも日頃からの練習を欠かさず取り組んでいきたいと思います。

 

-社内での防災意識の啓発についての展望はいかがでしょうか。

社員に対しては、まずは災害時に命を守ることを第一に考えてほしいですね。新しく家を建てる場合は、がけ崩れや津波・川の氾濫ができるだけ少ない場所を選ぶなどの意識を持ってほしいと思います。
社員によく話すのは「一人ひとりがお客様ではなく責任者」ということです。災害はいつ起こるかわかりませんが、忙しい毎日の中では「まあいいか」と備えが後回しになりがちです。そのためにも、朝礼や防災リュック見直しのタイミングなどを通じて、社員には災害対策の重要性をしっかり共通認識として浸透させたいです。

 

-全社で防災意識を高めれば、災害時に社員一人ひとりが避難・防災のリーダーとして地域の中で活躍することも期待できそうですね。

当社としてはそれこそが理想の姿だと考えています。地域向けの防災・炊き出し訓練で住民の皆さんとコミュニケーションをとることはもちろん、それぞれが住む地域でも周囲の方々と関係性を作っていけたら、まさに高知県が目指す地域共生社会につながります。
当社の取り組みが会社周辺地域に広がり、社員一人ひとりから社員の家族や住まう地域に広がっていく。そうやって少しずつ高知県全体に災害への備えが広がっていけば嬉しいなと思います。

 

-地域向けの防災イベントの開催だけにとどまらず、日頃から高い防災意識で様々な取り組みを行っている高知機型工業。企業の取り組みが少しずつ地域や社員の周辺の人たちへと広がっていき、やがて大きな防災の輪になることが大切だと感じました。北さん、大変学びの多いお話をありがとうございました。

 

記事執筆:ことのは舎
編集:株式会社CRAFT5



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