【取組紹介Vol.4】地域をつなぐボランティア活動!ひきこもり支援と高齢者支援の融合 「南国市あったかふれあいセンター」の取り組み<後編>

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掲載日 : 2024/10/31

「高知型地域共生社会」では、介護や子育て・就労困難者のサポートなど、分野を超えた包括的な支援体制の整備を進めています。その実現に向けて取り組みを行う県内各地の実践事例をご紹介します。
今回は「南国市あったかふれあいセンター」のインタビュー後編です。高齢者支援の詳しい内容と、支援において手応えを感じる部分、さらに今後の展望について担当の丹生谷(にゅうのや)さん・北野さんにお話を伺いました。
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あったかふれあいセンターとは
子どもから高齢者まで、年齢や障害の有無に関わらず、誰でも気軽に集い、必要なサービスを受けることができる「高知型地域共生社会」の拠点です。現在県内31市町村(全34市町村)55の拠点があり、地域のニーズや実情に応じた様々な取り組みを実施しています。
南国市あったかふれあいセンターは祝日等を除き開所しており、各曜日にプログラムを設け、「制度の狭間」にある方に必要なサービスを提供しています。
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※前編はこちらからご覧いただけます。

 

孤独になりがちな高齢者の一人暮らしに支援の手を


南国市社会福祉協議会

高齢者支援について語る丹生谷さん(写真:CRAFT5 Inc.)

 

-南国市あったかふれあいセンターが行う、高齢者支援の概要について教えてください。

丹生谷:「独居高齢者の集い」として、高齢者向けのプログラムを毎週水曜日と金曜日に実施しています。対象はお子さんがいない方、もしくはご家族が県外にいる一人暮らしの高齢者で、要介護認定を受けておらずデイサービスにも通っていない元気な方が主です。
ひきこもり支援のように明確にプログラムを定めるというよりは、利用者の皆さんからやりたいことを募っています。例えば体操や脳トレ、将棋などをして利用者同士で楽しんでもらうことに主眼を置いています。


独居高齢者の集い

体操などの様々なプログラムが用意されている「独居高齢者の集い」(写真:CRAFT5 Inc.)

 

-普段はお一人で暮らしている方も、同じ年代の方とのコミュニケーションがあると生活に張り合いが出ていいですね。

北野:夕食を一人で食べる方がほとんどなので、独居高齢者の集いではみんなで晩御飯を囲むことも行っています。おかずは仕出しのものを用意して、ご飯と味噌汁は館内で作って温かいものを出します。
一人分で作るのが難しいカレーやお好み焼きが食べたいというリクエストを受けて、みんなで食卓を囲むこともあります。冬は月1回、シチューも作ります。レトルト食品で食事を済ませる方も多く、一人でご飯を食べるのは寂しいですが、ここに来ればみんなと食べられるので皆さん楽しみにしているようです。

 

丹生谷:南国市あったかふれあいセンターは、以前は8時半から17時までしか開館していませんでした。しかし、その時間帯に来れる人はどうしても固定されてしまいます。そこで土日もプログラムを実施したり、夜も対応できる体制を整えたりして、今では19時15分まで開館する形に切り替えました。


夕食の準備

夕食の準備を通してコミュニケーションを取る利用者(写真:CRAFT5 Inc.)

 

-参加者からはどのような声が寄せられていますか。

丹生谷:毎週楽しみだと言ってくれる方が多いです。ご家族と一緒に住んでいれば相談できる小さな困りごとも、お子さんが県外にいてはなかなか頼れません。ここに来れば職員に相談でき、周りには同じ境遇の人たちがいて話せるので安心感があるという声もあります。
実際に「新型コロナウイルスの予防接種をしたいけど、電話がつながらないしインターネットはよくわからなくて困っている」という利用者に代わって、職員が手続きをした例もありました。普段から、簡単な書類確認などを含めた生活の困りごとを解決する支援を心がけています。

 

北野:独居高齢者の集いでは、2週間に1度の買い物支援も実施しています。一緒にスーパーへ行ってお米や水などの重いものを買うお手伝いをし、帰りに皆さんを車で自宅まで送る際、家の玄関まで荷物を届けます。一人で重いものを買いに行けずに困っている方は、「2週間に1度の買い物の時に手を貸してもらえるので助かる」と言ってくださっています。

 

ひきこもり状態から社会参加へとつなげるボランティアの取り組み

-南国市あったかふれあいセンターでは、高齢者支援とひきこもり支援をつなげる取り組みも実施しているそうですね。

北野:一人暮らしの高齢者は、家具の移動などもなかなか思うようにできません。そこで高齢者の自宅で人手が必要な作業があれば、「MORITO」の利用者と一緒にお伺いし、ソファーの移動などをお手伝いしています。
職員がその作業をするのは簡単ですが、ひきこもりの方の社会参加や地域とのコミュニケーション手段の一つとして、ボランティアに行く取り組みはとても重要だと考えています。そこから少しずつつながりを作っていければいいなと思います。

 

-MORITO利用者の手助けを受けた高齢者の皆さんは、どのような反応を示していましたか。

北野:高齢者の方には、お手伝いに来てくれたMORITOの利用者へのお礼としてお菓子やお茶を出してもらうように頼んでいます。お茶を飲みながらみんなで話す時間を設けることで、高齢者の方は「久しぶりに若い人が家に来た」と嬉しそうにしていますし、ひきこもりの方も地域と関わりを持つ良い機会になっているようです。

 

丹生谷:一方で、地域住民がひきこもりの方と接する機会はまだまだ少ないのが現状です。「どう関わればいいのかわからない」という不安から怖いイメージを持ったり、腫れ物に触るような対応をしてしまったりする場合もあります。
挨拶など気軽に声をかけるだけでも十分なのですが、ひきこもりの方たちは外の世界が怖いと思っていますし、地域の方も適切な接し方がわからない状態です。ひきこもりへの理解を広げるためにも、高齢者支援と絡めた活動をしながら少しずつ地域との接点を増やしていければと考えています。

 

南国市あったかふれあいセンターが描く、地域に根ざした支援活動の未来


夕食

夕食により生まれる高齢者同士のつながり(写真:CRAFT5 Inc.)

 

-これまで行ってきた様々な支援を通して、手応えを感じる瞬間はどのようなときですか。

丹生谷:もしも今の取り組みがなければ、高齢者同士のつながりも生まれず、ひきこもりの方が自立することもなかったと思います。来てくださる方たちのいきいきとした様子を見ていると、安心できる居場所づくりの面で私たちが貢献できていることに非常に大きな手応えを感じます。

 

北野:高齢者支援では、コロナ禍で集いが開催できない期間がありました。そんな中でも利用者同士が自主的に連絡網を作り、最後の人が私たちに電話で「みんな元気です」と報告してくれていました。
集いが再開した後も、「あの人は最近けがをしたらしい」という利用者を通じた情報提供があり、高齢者の見守りに役立っています。過去には「今日は休みます」と連絡を下さった方のろれつが回らない話し方が気になり、自宅に様子を見に行き脳梗塞が見つかった例もありました。地域の温かいつながりによって、高齢者の安全や健康を守ることにもつながっています。

 

-支援を行う中で、難しいと感じる部分はありますか。

丹生谷:私たちはひきこもり支援や高齢者支援の専門家ではないので、これでいいのかと迷う瞬間もあります。特にひきこもりは一言で表せるものではなく、その裏側には精神疾患や知的障害がある場合など、人によって要因が複雑に絡み合っています。時には専門機関と連携を取りながら、適切な支援ができるように努めています。

 

-南国市あったかふれあいセンターの今後の展望についてお聞かせください。

丹生谷:現在、南国市あったかふれあいセンターの取り組みは主に市の広報誌で紹介しています。全戸配布される中でどれくらいの方がご覧になっているのかわかりませんが、広報誌を見てひきこもりに悩むご家族から相談が寄せられることもあるため、一定の効果はあるのではと考えています。
ただ、今後は動画などのデジタル媒体を使った広報も必要になってくると思います。未だ検討段階ではありますが、支援が必要な方へ南国市あったかふれあいセンターの取り組みがダイレクトに届くための工夫は今後も重ねていくつもりです。

 

北野:利用者の皆さんへは限られた職員数で支援を行っており、新しい取り組みへ一歩を踏み出すことが難しいと感じる場面もあります。日々のプログラムを丁寧に行うことを大切にしつつ、今後は視野を広げて利用者のニーズに応じた内容へと発展させることも重要だと思います。MORITOのひきこもり支援や高齢者支援の取り組みの大枠は変わりませんが、利用者のニーズに合わせて中身を柔軟に変えていける運営体制を目指したいと思います。

 

-「ひきこもり状態にある人や高齢者といった、社会との接点が少なくなりがちな人の居場所を作りたい」という熱い想いが伝わってくるお話でした。同じ境遇の人同士や職員との会話を増やし、徐々にコミュニケーションの輪を外へと広げていく取り組みは、利用者自身はもちろん地域住民にとっても大切なつながりとなることでしょう。丹生谷さん、北野さん、貴重なお話をありがとうございました。


記事執筆:ことのは舎
編集:株式会社CRAFT5



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