【取組紹介Vol.3】 小さな異変も見逃さない。高齢者の見守り活動「こうち生活協同組合の取り組み」<後編>

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掲載日 : 2024/10/02

「高知型地域共生社会」では、介護や子育て・就労困難者のサポートなど、分野を超えた包括的な支援体制の整備を進めています。その実現に向けて取り組みを行う県内各地の実践事例をご紹介します。
今回は「こうち生活協同組合」のインタビュー後編です。配達員が地域のお困りごとに対応した実際の事例や、職場全体で意識をあわせて地域を見守るための活動について、担当の野村さん、山本さんにお話を伺いました。

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こうち生活協同組合とは
昭和60年11月、2013人の組合員によって立ち上げられました。組合員が主役である生協は、一人ひとりの出資と利用、そして運営活動によって支えられています。現在、高知県全域で10万人を超える組合員の輪が広がりつつあります。食品から日用品まで、生活に必要なものを県内各所に配達しながら、組合員の見守り活動にも力を入れています。
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※前編はこちらからご覧いただけます。

 

お弁当が命綱に!夕食宅配で広がる安心の輪


夕食配達

夕食配達の様子(写真:こうち生活協同組合)

 

-こうち生協は配送業務の中での地域見守り活動を行っているそうですが、実際にお困りごとの相談を受けたり、解決につながった例があればお聞かせください。

山本:昨年、組合員さんの振り込め詐欺被害を防止した事例がありました。いつもの配達にお伺いした際、組合員さんが慌てた様子で「早く銀行に行かないと」とお話していたそうです。配達員が詳しく話を聞き、何かおかしいと感じて警察への相談を勧めました。最終的には詐欺だとわかり、被害に遭わずに済みました。

 

野村:週に1回の生協の配達業務以外に、お弁当を毎日届ける夕食宅配も行っています。平日の夕食に食べるお弁当を午後の時間帯にお届けするサービスで、高齢者の利用が多いのが特長です。同じ配達員が毎日お伺いするので、高齢者の方の異変にもいち早く気づけるメリットがあります。

 

山本:ご自宅にいらっしゃる方には手渡しでお弁当を届け、元気な姿を毎日確認することができますし、在宅が確認できない・応答がない場合などはご家族や地域包括支援センターへ連絡を取ることもあります。例えば「昨日届けたお弁当が手つかずで玄関に残っている」という例も多いです。
そのほとんどが食べ忘れで事なきを得るのですが、中には具合が悪くて家の中で倒れていて、配達員が救急車を呼び一命を取り留めたこともありました。

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地域包括支援センターとは
各市町村に設置された支援機関。保健師・主任介護支援専門員(主任ケアマネ)・社会福祉士等が中心となって、介護予防のための個別プランの作成や、高齢者に対する総合相談・支援事業など、高齢者が地域において自立した日常生活を営むことができるよう包括的かつ継続的な支援を行っています。
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-毎日お弁当を届けてくれる人がいれば、ご家族も安心できますね。夕食宅配サービスについて、利用者から寄せられる声はどのようなものが多いですか。

野村:命を助けることができた方のご家族がお礼を伝えてくださったこともありますし、残念ながら発見が一歩遅く亡くなってしまった方も、ご遺族は「生協さんのおかげで早く見つけてあげることができました」と感謝の声を寄せてくださいました。

 

山本:夕食宅配の利用者はお年寄りの一人暮らしが多く、県外で離れて暮らすお子さんが「親に利用してほしいと思って申し込みました」というケースも増えています。一人暮らしの高齢者の場合は、ご家族の連絡先を事前にお伺いしておき、万が一の事態にも備えられる体制を整えています。

 

地域と連携した子育て支援策を展開


こうち生協子育て広場

子育て広場の様子(写真:こうち生活協同組合)

 

-こうち生協では毎年、子ども食堂への寄付活動を行っているとのことですが、子育て世帯向けへの支援としてはどういったものがありますか。

野村:毎週月曜日の午前中、コープよしだ2階の組合員活動室にて「子育て広場」を開催しています。子育て中の方がほっと一息つけるよう、託児スタッフが子どもたちを見ている間にゆっくりコーヒーを飲みながらおしゃべりしたり、親御さん同士のつながりを作れる場を提供しています。他には、高知市からの要望を受けて、市内の児童クラブへお弁当を届ける事業も今年度から始まりました。

 

山本:夏休みは給食が休みになるため、子どもを児童クラブへ預けている親御さんは、毎日お弁当を持たせることに大きな負担を感じています。共働きでお弁当を作る時間がないため、お金を持たせて子ども自身がコンビニへ買いに行く家庭や、お昼ご飯が菓子パン一つだけのお子さんもいるそうです。
そんな状況が続くと子どもたちの栄養面が心配だということで、高知市から「生協でお弁当を宅配してくれないか」と依頼がありました。これまでは夕食宅配のみ対応しており、お昼までの配達はなかなかハードルが高かったのですが、地域のお困りごとですからなんとか体制を組み直しました。

 

-児童クラブへのお弁当宅配は、実際にどれくらいの方が利用されましたか。

山本:今年8月の3週目と4週目の2週間限定という形にはなりましたが、121名の申込者に対して合計841食のお弁当を届けることができました。高知市だけでも、夏休みに児童クラブに通う子どもたちは2000人ほどいるようです。お弁当の利用には生協へ加入していただくことが前提になりますが、今後もご要望があれば夏休みのお弁当の生産体制を組み、柔軟に対応できるようにしたいと考えています。

 

こうち生協の見守り活動を支える、情報連携の仕組み


こうち生活協同組合

関係機関と情報連携を行う様子 (写真:CRAFT5 Inc.)

 

-地域に根ざした活動を数多く行う中では、関係機関との情報の連携も必要になると思います。具体的にどのような取り組みをしているのか教えてください。

山本:現在は高知市地域包括支援センターと密に連携を取り、高齢者などの見守りを進めています。しかし、実は最初から連携があったわけではなく、当初は地域で何かあったときに民生委員さんへ連絡を取るプロセスを踏んでいました。しかし、なかなか連絡が取れないケースや、どの民生委員さんに連絡するのが最適かわからない場合もありました。
そんなときに夕食宅配の職員の一人が「こういうときは地域包括支援センターに連絡するといい」と教えてくれて、そこで初めてセンターの存在を知りました。職員研修でセンターの所長さんにお話しいただく機会を設け、私たちの取り組みもお伝えしたところ、ぜひ連携して情報を伝えあっていきましょうという話になり、今では頼れる存在として色々と相談をさせていただいています。


こうち生活協同組合

こうち生協の取り組みについて語る山本さん(写真:CRAFT5 Inc.)

 

-見守りをする中で「何か起きた場合は地域包括支援センターに連絡をすればいい」と事前にわかっていれば、配達員の皆さんも相談先に迷うことがなくなり安心できますね。

山本:例えば、夕食宅配でお伺いしたお宅で応答がない場合に「配達に行ったけど留守で、しばらく帰った様子もないのですが何か知りませんか」とセンターに聞いたら、「その方は先週入院されました」などと最新情報を教えてくれるので大変助かっています。
お年寄りに認知症の疑いがある場合も気軽に教えてほしいと言ってくださり、夏場にストーブをつけているなど、配達員が違和感を持った出来事があれば小さなことでも情報共有する流れができています。

 

野村:配達員には職員ハンドブックを配布し、異変があればすぐに地域包括支援センターへ連絡するよう伝えています。有事のときはどうしても慌ててしまいますから、普段から職員の意識を統一し、困ったときの連絡先をいつでも手元に置いておくことが大事です。これからも配達時の見守り活動を通して、皆さんが安心して暮らせる地域社会づくりに貢献したいと思います。

 

-地域と組合員に寄り添ったサービスを展開する「こうち生協」だからこそできる見守り活動は、住民の安心・安全につながる重要なものです。高齢化が進む高知県において、ぜひ今後も見守りの目を絶やさずに取り組みを継続いただきたいと思います。野村さん、山本さん、今回はお話をお聞かせいただきありがとうございました。


記事執筆:ことのは舎
編集:株式会社CRAFT5



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