【取組紹介Vol.26】子どもも“地域”を見守る一人に 馬路村「子ども民生委員」の取り組み【前編】

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掲載日 : 2026/11/04

前編サムネイル

馬路村社会福祉協議会の会長 西岡 貴範さん

 

今回は、安芸郡馬路村の「社会福祉法人 馬路村社会福祉協議会」にインタビューを行いました。

小学校で学んだ福祉を地域での交流へつなげる「子ども民生委員」の取組を、独自に進めている同協議会。前編では、会長の西岡さんに、活動を始めた経緯や仕組み、デイサービスやあったかふれあいセンターなどでの活動を通じて、子どもたちに生まれている変化について伺いました。

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社会福祉法人 馬路村社会福祉協議会
高知県東部の山あいに位置する馬路村で、1991(平成3)年に設立された社会福祉法人。デイサービスやあったかふれあいセンターの運営に加え、安心子育て支援、生活支援体制整備など、幅広い事業を手がける。村内6か所の地区会館ではサロンを開き、住民への訪問や見守り、介護予防、育児相談にも対応。住み慣れた地域で安心して暮らせるよう、一人ひとりの生活を支えている。

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「高知家地域共生社会」では、介護や子育て・就労困難者のサポートなど、分野を超えた包括的な支援体制の整備を進めています。その実現に向けて取り組みを行う県内各地の実践事例をご紹介します。

 

人口減少が進む村で生まれた「子ども民生委員」


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人口減少が進む中でも地域のつながりが残る馬路村

 

-「子ども民生委員」の取り組みを始めた経緯を教えてください。

馬路村社会福祉協議会では、2012(平成24)年度から馬路小学校で福祉教育を続けています。取り上げるのは、障害のある方や高齢者、認知症のことなどです。先生方と相談し、学年に合わせた授業を組み立ててきました。
馬路村は小さな村ですから、隣近所の方を気に掛ける関係は今もあります。それでも、人口が減り、核家族化が進む中で、地域を見守る目が少しずつ薄くなっていると感じていました。
子どもたちに、もっと近所の高齢者の方へ目を向けてもらえたら。その活動を保護者の方に見てもらうことが、地域へ関心を持つきっかけになれば。そんな思いから、学校で学んだ福祉を地域での実践へつなぐ「子ども民生委員」を、2019(令和元)年度に始めました。当時は参考にできる事例もなく、手探りでのスタートでしたね。

 

福祉を学び、「委嘱状」を受け取って地域へ

-子ども民生委員として活動するまでの流れを教えてください。

対象は小学3年生から6年生です。1、2年生の間は福祉教育の授業で基礎を学び、3年生になると「認知症キッズサポーター養成講座」と「子ども民生委員養成講座」を受けます。
馬路小学校は複式学級のため、講座には3、4年生が一緒に参加します。3年生にとっては初めての講座で、4年生は前年度の復習ですね。5、6年生も福祉教育を続けながら、子ども民生委員として経験を重ねていきます。

一つの節目となるのが、7月の終業式です。大人の民生委員と同じように、社会福祉協議会の会長から、一人ひとりへ委嘱状を手渡します。
委嘱状を受け取ると、いよいよ地域での活動が始まります。その前に欠かさないのが、職員と一緒に「馬路村子ども民生委員信条」を読み上げること。大人の民生委員が定例会で読む信条をもとに作ったもので、毎回、自分たちの役割を確かめてから活動へ向かいます。

 

-全員が地域で活動するのでしょうか。

学校での講座や説明には全員が参加しますが、実際の活動は希望制です。夏休み、冬休み、春休みなどの長期休暇を中心に、子どもたちの予定を聞きながら日程を組んでいます。
学校行事や習い事もありますから、参加できる時に来てもらえればいい。それぞれのペースで、無理なく地域と関われる形にしています。

 

デイサービスやサロンで重ねる交流


前編4

笑顔が広がる、子どもたちとサロンの皆さんとのひととき

 

-具体的には、どのような活動をしていますか。

中心となるのは、デイサービスや、あったかふれあいセンターのサロンでの交流です。利用者の皆さんと一緒に体操やレクリエーションをしたり、おやつを作ったりしながら、1時間から1時間半ほど過ごします。
自分が暮らす地区や、祖父母が通っているサロンへ行く子もいます。身近に高齢者の方がいない場合は、デイサービスでの活動が多いですね。

今、委嘱しているのは小学校3年生から6年生まで16人。長期休暇中に週2回程度活動している子もいます。

 

-高齢者の方の自宅を訪ねることもあるそうですね。

夏休みに1、2回ほど、希望する子どもが職員と一緒に、高齢者の方のお宅を訪ねています。事前に連絡をして、家の中にもおじゃまし、1時間ほどゆっくりとお話しするんです。
訪問するのはこちらですが、どちらが訪ねたのか分からないほど、温かくもてなしていただくこともありますね。
一度顔を合わせていれば、後日、別の場所で見掛けた時に「あ、あのおばあちゃんや」と気づきます。それだけでも、随分違うんですよ。そうした経験を重ね、中学生や高校生になっても、地域の方へ目を向ける気持ちを持ち続けてほしいですね。

 

「楽しかった」から、その先の気づきへ

-子ども民生委員には、どのような見守りをしてほしいと考えていますか。

まずは、道で会った人にあいさつすることです。子どもたちだけで何かを解決するのではなく、「いつもと少し違うな」と感じた時に、家族や周りの大人へ伝えてもらえればと思っています。
もちろん、活動を無理に勧めることはありません。「やりたい」と手を挙げる子もいれば、「今回はやらない」という子もいます。それぞれの気持ちを尊重しながら、地域について考えるきっかけをつくっています。

 

-活動を通して、子どもたちに変化は見られますか。

活動後に書いてもらう記録を見ると、学年による変化がよく分かります。3、4年生は「レクリエーションが楽しかった」といった感想が中心ですが、それでいいんです。
5、6年生になると、「なぜ高齢者の方がサロンに来ているのか」「みんなと話すことには、どんな意味があるのか」と、活動の背景にも目を向けるようになります。交流が閉じこもりを防ぐことにつながると気づき、自分の祖父母や近所の方に置き換えて考える子もいます。
「楽しかった」という気持ちから始まり、体験を重ねる中で、人の暮らしや地域を見る目が育っていく。記録を読みながら、「こういう見方をするようになったんだな」と子どもの成長も感じますね。

 

 

人口減少が進む馬路村で、学校での福祉教育を地域の交流へつなげてきた「子ども民生委員」。子どもたちが地域の方と顔を合わせ、言葉を交わす経験が、日常の中で互いを気に掛ける関係へつながっていくことが伝わってきました。
後編では、活動を通じた子どもたちの成長や保護者から寄せられた声、「小学生も村人の一人」と語る西岡さんの思いを伺います。あわせて、あったかふれあいセンターで、子どもたちとサロンに通う皆さんが交流する様子をお届けします。

 

 

記事執筆:是永 裕子

 

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