【取組紹介Vol.24】当事者と家族の声を聴き、必要な支援につなげる。「NPO法人 脳損傷友の会高知 青い空」の取り組み【前編】

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掲載日 : 2026/09/29

今回は、高知家地域共生社会推進宣言団体として活動する「NPO法人 脳損傷友の会高知 青い空」にインタビューを行いました。

青い空は、高次脳機能障害のある当事者とその家族による家族会を原点に、就労支援や相談所の運営、医療機関と連携した支援など、当事者の声から生まれたさまざまな活動を展開しています。

今回は理事長の片岡さんに、団体設立のきっかけと、当事者や家族を地域で支えるための取り組みについて伺いました。

 


前編サムネイル

青い空が運営する、就労継続支援B型事業所の様子
(写真:高知県子ども・福祉政策部地域福祉政策課)

 

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NPO法人 脳損傷友の会高知 青い空

2003(平成15)年、高次脳機能障害の当事者とその家族による家族会として活動を開始。家族会で寄せられた声を起点に、就労継続支援B型事業所や相談支援などの活動を拡大してきた。近森リハビリテーション病院と共同で高次脳機能障害支援拠点センターの運営を担うほか、高次脳機能障害者支援法の成立への貢献、障害者芸術文化活動の推進など、幅広い取り組みを展開している。

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「高知家地域共生社会」では、介護や子育て・就労困難者のサポートなど、分野を超えた包括的な支援体制の整備を進めています。その実現に向けて取り組みを行う県内各地の実践事例をご紹介します。

 

家族だけで抱えていた困難。同じ悩みを語り合える場から始まった「青い空」


前編2

「NPO法人 脳損傷友の会高知 青い空」理事長の片岡さん

(写真:高知県子ども・福祉政策部地域福祉政策課)

 

-まず、「NPO法人 脳損傷友の会高知 青い空」の概要について教えてください。

青い空の活動の原点は、高次脳機能障害のある当事者とその家族が集まる家族会です。法人の設立以来、毎月開催する家族会には、当事者・家族・支援者など15〜30人ほどが参加して悩みや近況を共有する場となっています。また、女性専門職が女性ならではのお悩み相談に乗る「女子会」も定期開催しています。

私たちにとって、この家族会は活動の根幹です。当事者や家族から聞こえてきた困りごとを拾い上げ、「この課題を解決するにはどんな支援が必要なんだろう」と考えながら、さまざまな事業につなげてきました。

現在は、就労継続支援B型事業所、高次脳機能障害支援拠点センターおよび相談所の運営などの幅広い事業を行い、高次脳機能障害の当事者や家族をさまざまな面で支えています。

 

-法人を設立した経緯についてお聞かせください。

きっかけは、1999(平成11)年に当時高校生だった私の弟が交通事故に遭い、脳を損傷したことです。弟はしばらく意識不明の状態が続きましたが、一命を取り留めました。右肩に軽い麻痺が残ったものの、数か月後には歩ける状態にまで回復し、退院して自宅に戻りました。

ところが、帰宅後の生活ではさまざまな問題が起こりました。昨日の出来事を覚えていない、感情を抑えられず暴力的になる、通販の商品を次々と購入してしまうなど、弟がとる一つひとつの行動の理由がわからず戸惑いを隠せませんでした。

当時、私は理学療法士の養成校に通っており、高次脳機能障害という言葉自体は知っていました。けれども、それが弟の状態に当てはまるとは思いもしなかったのです。母は仕事を辞めて弟の世話に専念し、私と父も仕事から帰宅すれば弟の対応に追われる日々で、家族全員が疲弊し始めていました。

そんな生活が1年ほど続いたある時、たまたま新聞で高次脳機能障害の記事を見つけました。名古屋に家族会があると知り、すぐに家族で足を運んだことをきっかけに、弟が高次脳機能障害だと判明しました。私も両親も、弟に診断名がつき、それまで理解できなかった行動に理由があるとわかって少し気持ちが整理されたように思います。

父は名古屋の家族会を見て、「高知にもこういう場所が必要だ」と考えました。そこで同じような悩みを抱えていた4家族が集まり、2003(平成15)年に当事者家族会を立ち上げたことが、青い空の始まりです。

 

孤立を防ぎ、必要な支援へつなぐために欠かせない医療・地域の連携

-高次脳機能障害とは、どのような障害なのでしょうか。

交通事故などによるけがや、脳出血・脳梗塞といった病気によって脳が損傷することで生じる、認知障害や行動障害などの総称です。厚生労働省の推計では、全国に23万人の患者がいるとされています。

高次脳機能障害は、主に「注意障害」「記憶障害」「遂行機能障害」「社会的行動障害」の4つがあります。例えば遂行機能障害では、先の見通しを立てたり、計画通りに行動できたかどうかを振り返ることが難しくなります。

社会的行動障害では、感情をコントロールできず、暴言や暴力につながる場合があります。歩く・話すなどの身体的な機能にそれほど支障がない方もいて、周囲からは見えにくい障害だと言われています。

私の弟がそうだったように、退院して日常生活に戻ったあとにさまざまな問題が表面化し、「どう対処すべきなのかわからない」と悩む当事者やご家族も非常に多いですね。

 

-活動にあたり、地域の他団体や企業、医療機関とはどのように連携していますか。

医療機関との連携には力を入れています。高次脳機能障害は、入院中は問題なく過ごしているように見えても、自宅や職場などに戻ると「以前と性格が変わった」「人の話を聞いているのかわからない」と、周囲が違和感を覚えることがあります。

そういった日常生活での問題が積み重なると、当事者やご家族が苦しくなってしまい、社会的な孤立につながるケースも少なくありません。だからこそ、医療から離れて地域に戻ったあとも支援をつなげることが大切です。

2013(平成25)年から、青い空では近森リハビリテーション病院と協働して「高次脳機能障害支援拠点機関」として活動を開始しました。名称が「高知県高次脳機能障害者支援センター」に変わった現在も、医療・リハビリから生活支援、社会参加に向けた支援までを切れ目なく受けられるようにする取り組みを続けています。

また、職業センターや弁護士など、さまざまな分野の専門家ともつながっています。以前、高次脳機能障害のある方が詐欺被害に遭うケースが重なった際には、弁護士にお願いして当事者・家族・支援者に向けた研修を実施していただきました。

一つの法人だけですべてを解決しようとせず、日頃から幅広い分野の専門家とつながることで、困りごとが生じた時に適切な支援機関へ相談できる体制をつくっています。

 

一人ひとりに合った環境と関わり方を。「青い空」が大切にする支援


前編4

「青い空」内に併設されたレザークラフト工房で作業を行う様子
(写真:ことのは舎)

 

-青い空の活動において、大切にしていることを教えてください。

一番大切にしているのは、やはり当事者と家族の声です。

青い空の事業は、最初から「これをやろう」と決めてつくってきたものではありません。家族会で「こんなことに困っている」「こういう場所があればいい」という声を聞き、それをどうすれば解決できるのか考える中で、一つずつ形になってきました。

高次脳機能障害は、長い時間をかけた支援が必要な障害です。私の弟も、事故直後は感情を抑えることが難しく、どこへ行っても怒りに任せた行動をしていました。しかし、学校の先生方が弟の持つ障害について勉強してくださり、さまざまな対策をとってくれました。

特に効果があったと感じるのは、一人になって落ち着ける場所を用意することです。カッとなってしまったときも、自分の行動を振り返る時間を持つ訓練を何年も続けた結果、今では一人で街へ出かけてもトラブルを起こすことは一切なくなりました。

すぐに「できる・できない」を判断するのではなく、その人に合った環境や関わり方を考えながら、長い目で支えていくことが大切だと感じています。

また、本人や周囲の環境を変えることだけが支援ではありません。高次脳機能障害があっても、その人が晴れ晴れとした気持ちで暮らせる場所を社会で増やしていくことも重要です。そのために何ができるのかを考え、発信し続けることも、青い空の大切な役割だと考えています。

 

 

-当事者や家族の声を出発点に、就労・相談・医療との連携といった支援の幅を広げてきた「青い空」。その歩みの根底には、高次脳機能障害のある本人だけに変化を求めるのではなく、「その人が自分らしく暮らせる社会をつくろう」という想いがあります。

その想いはやがて、高知県内での支援にとどまらず、高次脳機能障害のある人々を取り巻く社会そのものを変えるための活動へとつながっていきました。

後編では、長年にわたって成立を求めてきた「高次脳機能障害者支援法」への想いと、法律を今後の支援にどう生かすのか、今後の展望について伺います。

 

 

記事執筆:ことのは舎

 

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