【取組紹介Vol.21】駄菓子屋を入り口に、子どもの居場所を地域へ。「合同会社きみのたねこうぼう」の取り組み

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掲載日 : 2026/07/29

今回は、高知家地域共生社会推進宣言団体である「合同会社きみのたねこうぼう」にインタビューを行いました。

きみのたねこうぼうは、子どもたちの「好き」や「やりたい」を育むことを目的に活動する合同会社です。子どもたちの可能性を引き出すための幅広い活動を展開しています。

今回は、きみのたねこうぼう代表社員の澤田さんに、活動を始めたきっかけや子どもたちの居場所づくりに対する想いについて伺いました。

 


サムネイル

多くの子どもたちが買い物に訪れる駄菓子屋「きみたね」

(写真:ことのは舎)

 

 

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合同会社きみのたねこうぼう

2023(令和5)年7月、学生団体として活動を開始。「すべてのこどもたちの”すき”を見つけ”やりたい”を応援する社会。」をビジョンに掲げ、高知県内各地で体験型ワークショップを開催。数々のビジネスコンテストで受賞経験を持つ。

2025(令和7)年5月に法人化し、土佐市の空き家を活用した駄菓子屋とフリースペースをオープン。現在は伴走支援塾の運営や独自の教材開発も手がける。毎月第2日曜日には駄菓子屋「きみたね」でイベントを開催し、地域住民が世代を超えて交流する場づくりに取り組む。

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「高知家地域共生社会」では、介護や子育て・就労困難者のサポートなど、分野を超えた包括的な支援体制の整備を進めています。その実現に向けて取り組みを行う県内各地の実践事例をご紹介します。

 

「子どもたちがやりたいことに挑戦できる場づくり」への想いが、活動の原点


前編2

きみのたねこうぼう代表社員 澤田朱夏さん

(写真:ことのは舎)

 

-きみのたねこうぼうの概要について教えてください。

きみのたねこうぼうは、子どもたちの「好き」や「やりたい」を見つけ、伸ばしていける社会の実現を目指して活動しています。

2023(令和5)年7月、私が高専3年生の時に学生団体として立ち上げた当初は、高知県内各地で子ども向けの体験型ワークショップを開催してきました。家庭の事情などで習い事や体験活動に参加する機会が少ない子どもたちにも、さまざまな経験を届けたいという想いから始まった活動です。

その後、土佐市で空き家を持つ大家さんとのご縁があり、活動拠点を得て2025(令和7)年5月に法人化しました。現在は駄菓子屋や伴走支援塾の運営、イベント代行、教材開発といった子どもたちの居場所づくりや新しい体験の提供につながる事業を展開しています。

 

-なぜ学生団体を立ち上げようと思ったのですか。

実は私自身、幼少期から家庭の事情で経済的・精神的に苦しい環境で育ちました。

家に帰ってもゆっくりできず、悩んだ末に17歳で家出をしたことをきっかけに子ども食堂と出会い、そこで多くの人に支えられました。子ども食堂の存在はとてもありがたく、大好きな場所だった一方で「自分は助けてもらう側なんだ」という感覚が抜けきらず、私自身の尊厳が保たれていないように感じたこともありました。

そこで、子どもたちが「誰かに助けられている」と感じることなく、もっと自然に通える場所を提供できればと考え、子どもの居場所づくりに取り組もうと決めたのです。ただ、拠点を持つ前に実績が必要だと思い、はじめの2年間は県内各地で体験型ワークショップを開催して経験を積み、法人化に向けて活動の場を広げていきました。

 

-「きみのたねこうぼう」という名前の由来を教えてください。

「きみの」は言葉通り「あなたの」という意味で、子どもたちの将来やりたいことや夢が叶った姿を「花が開いた姿」に見立て、一人ひとりの種を見つけたり育てる場を作りたいという想いが込められています。

ただ、子どもたちの中には「自分には種がない」と思っていたり、「どの種がいいのかわからない」という子もいます。子どもたち自身が持つ「やってみたい」という気持ちを起点にして、学び、挑戦し、実現するプロセスに伴走する探求型の居場所を作りたいと考え、きみのたねこうぼうと名づけました。

 

駄菓子屋は入り口。本当に届けたいのは、子どもたちが自分らしく過ごせる場所

-土佐市で駄菓子屋を開くに至った経緯についてお聞かせください。

当初は「探究ラボ」のような形で、子どもたちが毎日来られる場所を作りたいと思っていました。ただ、それでは地域にあまり馴染みがなく、子どもも保護者も入りづらいと感じる可能性があります。

子どもが安心して通うためには、まず保護者が「ここなら大丈夫」と思える場所であることが大切です。親世代にも馴染みがあり、安心できるイメージがあるものは何だろうと考えた時に思い浮かんだのが、駄菓子屋でした。

駄菓子屋なら、子どもたちはお菓子を買うついでにフリースペースで過ごすことができます。またお菓子も安いものが多いので、それほどお金がなくても楽しめます。駄菓子屋を入り口として、その先に子どもたちが自分らしく自由に過ごせる居場所を作ろうと思いました。

現在は毎週水曜日・木曜日を中心に駄菓子屋を開き、フリースペースも同時に開放しています。

 

-駄菓子屋を訪れる子どもたちはどのように過ごしていますか。

多い日には30~40人ほどの子どもたちが訪れ、庭いっぱいに自転車が並ぶこともあります。特に暑い日と寒い日は人気ですね。フリースペースで本を読んだり、工作をしたり、ピアノを弾いたりして自由に過ごしています。

スタッフが常に声をかけているわけではなく、子どもたち同士で遊んだり、話をしたくなればスタッフのもとへ来たりと、それぞれが自分にとって心地よい距離感で過ごすことを大切にしています。

 

-駄菓子屋「きみたね」のある空き家はどのようにして見つけましたか。

私は学生団体時代から「子どもたちの居場所となる拠点を持ちたい」と考え、県内各地で物件を探していました。

そこで、空き家を使って新たな挑戦をする人の想いを可視化し、共感した貸主とマッチングする「さかさま不動産」というサービスを通じて物件を貸してくれる方を募りましたが、なかなか見つかりませんでした。

2年ほど拠点が決まらず諦めかけた時、私たちの活動を知った大家さんから「家を見に来ませんか」と声を掛けられたことが、この場所との出会いでした。空き家を管理する代わりに安く貸していただき、今では子どもたちが気軽に立ち寄れる交流の場へと育ちつつあります。

 

 

子どもも大人も集う場所。「蚤の市」が育む地域のつながり


前編3

多くの親子連れが「蚤の市」の流しそうめんを楽しんだ

(写真:ことのは舎)

 

-駄菓子屋きみたねにとって「蚤の市」とはどういったイベントですか。

地元商店街を中心に開催されている「高岡蚤の市」に、2025(令和7年)年6月から出店させていただいています。

実は、駄菓子屋をオープンする前の6か月間は「高岡蚤の市」に出張駄菓子屋として参加しており、その流れで私たちも独自のイベントを実施するようになりました。内容は季節に合わせて変えていて、これまで流しそうめんやシソジュースパーティーなどを行いました。

「高岡蚤の市」に遊びに来た親子が駄菓子屋へ立ち寄ることも多く、この日のために遠方から毎回来てくれる子もいます。普段の駄菓子屋とはまた違い、地域の方や親子連れなど幅広い人が集まるにぎやかな場となっています。

 

-「蚤の市」への出店をきっかけに、地域に交流が生まれた事例はありますか。

子どもたち同士の新たなつながりが生まれた場面はとても印象的でした。

以前、大家さんのお孫さんが出店者としてハンドメイド作品を販売した際、地域の子どもたちが作品を見て「どうやって作るの?」と声をかけ、「今度一緒に作ろう」と約束していました。

住む場所も学年も違い、本来なら出会うことのなかった子たちが、蚤の市を通して交流が深まった場面はとても嬉しかったですね。こうしたつながりが少しずつ地域に広がっていけばいいなと思っています。

また、蚤の市の日は地域の大人が気軽に立ち寄れる日でもあります。より多くの保護者や地域の方々が訪れることで、「子どもたちにとって安心の場所だ」と知っていただく機会にもなっています。

 

-きみのたねこうぼうの活動にあたり、地域とどのように連携していますか。

駄菓子屋を始める時は、大家さんと一緒に近隣の皆さんへご挨拶に伺いました。地域の方々は、子どもたちがたくさん遊びに来ることも含めて温かく受け入れてくださっています。

また、地域の商店から寄付をいただいたり、駄菓子屋のチラシを置いてくださったり、時には「駄菓子屋までの道順がわからない」という子の道案内をしてくれることもあります。そのお返しに、私たちも駄菓子屋で地域のイベントのポスターを掲示するなど、お互いに支え合う関係性を大切にしています。

また、駄菓子屋の運営はきみのたねこうぼうの学生ボランティア10名に加え、土佐市青年団や高知大学の学生団体「なぶらっこ」と連携して行っており、協力者も少しずつ増えています。

子どもの居場所が「地域にたくさんある未来」を目指して

-きみのたねこうぼうがこれから挑戦したいことや、目指す姿について教えてください。

私たちは拠点を増やしたり、活動の規模を広げることよりも、土佐市が「きみのたねこうぼうがなくても困らない地域」になってほしいと願っています。

「ここがなくなったら遊ぶ場所がない」という言葉を子どもたちから聞いた時は、駄菓子屋きみたねが地域の中で大切な場所になっていると実感するとともに、まだまだ子どもたちの遊び場や居場所が少ない現実があると感じました。

もちろん、この場所を必要としてくれる子がいる限り活動は続けていきますが、私たちの取り組みを見て「自分の地域でもやってみよう」「私にできることは何だろう」と考える人が一人でも増えてくれるのが一番嬉しいですね。

今後も、日頃から協力してくださる地域の皆さんや、青年団・学生ボランティア・社会福祉協議会、地元商店街などと協力しながら、地域と一緒になって子どもたちの居場所づくりを進めていきたいと思います。

 

-子どもたちとその保護者、地域住民、ボランティアなど多くの人が集まり、新しいつながりを生んでいる「きみのたねこうぼう」の取り組み。

印象的だったのは、「この場所を大きくするのではなく、地域の中に子どもたちが安心して過ごせる居場所の選択肢を増やしたい」という澤田さんの言葉です。

地域の駄菓子屋から始まった挑戦が今後どのような輪を広げていくのか、その歩みが楽しみです。お話をお聞かせいただき、ありがとうございました。

 

 

記事執筆:ことのは舎

 

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