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- 【取組紹介Vol.11】食でつながる、笑顔が広がる。「大篠子ども食堂」の取り組み
今回は高知家地域共生社会推進宣言団体である「大篠(おおしの)子ども食堂(南国市)」にインタビューを行いました。JA高知県女性部南国市地区大篠支部 部長の窪田さんに、子ども食堂を立ち上げた経緯や地域社会との連携についてお話を伺いました。
地域住民180名ほどが訪れ、地元野菜を豊富に使用したバイキングを楽しんだ
(写真:ことのは舎)
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大篠子ども食堂
2018(平成30)年、JA南国市(当時)大篠支部女性部のメンバーが立ち上げました。家族連れはもちろん、近隣に住む高齢者まで幅広い世代が毎回多く訪れ、開店前から行列ができるほど大盛況です。参加費は大人300円、高校生までの子どもは無料。地元農家のつながりを活かして食材を集め、月1回、第2土曜日に栄養満点の食事とともに地域の憩いの場を提供しています。
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「高知型地域共生社会」では、介護や子育て・就労困難者のサポートなど、分野を超えた包括的な支援体制の整備を進めています。その実現に向けて取り組みを行う県内各地の実践事例をご紹介します。
夏休み明けの“心配”から始まった大篠子ども食堂
大篠子ども食堂について話す窪田さん
(写真:ことのは舎)
-はじめに、大篠子ども食堂を立ち上げた経緯についてお聞かせください。
女性部に所属する地域の民生委員さんから、あるとき「夏休み明けに痩せている子がいて心配」という情報が寄せられたのがきっかけです。学校の給食がなく、昼ご飯を充分食べられない子どもがいるのかもしれないと考えました。
そこで「女性部で子どもたちを支える活動をしよう」と話し、2018(平成30)年5月、子ども食堂を立ち上げました。
当時は今ほど子ども食堂の存在が知られておらず、周囲からは賛同や疑問など様々な声が聞かれました。それでも、地域に困りごとがあるのなら自分たちのできる範囲で力になりたいと思い、気持ちを同じくするメンバーと一緒に毎月の活動をスタートしました。当時JAの女性部で子ども食堂を始めたのは、全国初の取り組みでした。
立ち上げ当初は大篠小学校近くのJAの大篠支所で活動していましたが、南国市の4つの支所が2024(令和6)年に再編されたことをきっかけに、現在は南国市大そね乙のなんごく南支所に場所を移しました。
-県内でも早くから取り組まれていたんですね。地域住民の皆さんからも人気を集めているのではと想像します。
バイキングでの料理は毎回200食分位を目安に用意し、子ども達や地域住民の皆さんが食べに来てくれます。家族連れはもちろん、高齢者お一人や友達同士などで誘い合わせて来てくださり、11時半の開場前には列ができることもあります。
もともとバイキング形式でスタートしたものの、コロナ禍には人の密集を避けるためお弁当に変えざるを得ませんでした。現在はバイキングを復活させ、どうしても会場で食べられない方にのみお弁当を渡す方法で運営しています。
-再びバイキング形式に戻した理由は何でしょうか。
会場に集まって一緒に食べてもらうこと、地域のつながりを作る場にすることも重要視しているからです。「子どもたちが地域とのつながりを感じられる居場所にしたい」という想いがあったため、バイキングで親子同士やご近所さん同士が会話を楽しみながら食事ができる場を提供したいと考えています。
野菜もお米も地元産。栄養満点でおいしいメニューを提供
女性部のメンバーが朝8時から、総勢20名で調理に取り掛かる
(写真:ことのは舎)
-料理に使用する食材はどのように集めていますか。
女性部のメンバーには農家も多くいるため、その横のつながりやJAを通したつながりから野菜・お米・鶏卵などを提供いただいています。基本的には野菜中心の献立で、お肉やベーコンなどを買い足して子どもたちも食べやすいメニューの提供を心がけています。地元の野菜をたくさん使った料理と、時には季節のフルーツがいただける場合もあり、皆さん喜んで食べてくれています。
-バイキングでは目移りするほど多くの料理が並んでいますね。
子どもたちに人気なのは、フライやメンチカツといったお肉を使った料理です。野菜が苦手な子も多いですが、ベーコンを巻いて焼いたりして、少しでも食べてもらえる工夫をしています。
また最近は白米を食べない子が増えているため、具材を混ぜて小さめのおにぎりにします。残りはパットライス(ポン菓子)にして子どもたちのお土産にすることで、少しでも地元のお米の消費につながればと考えています。
バイキング会場には、ご飯・おかず・デザートをあわせて15種類以上の料理が並ぶ
(写真:ことのは舎)
「地域にあって当たり前の子ども食堂」を目指して
南国市にゆかりのある中高生で構成される「南子連ジュニア・リーダーズ」が
地域の子どもたちに遊び場を提供(写真:ことのは舎)
-大篠子ども食堂では、食事の提供だけでなく地域と連携した活動も行っているそうですね。
南国市にゆかりのある中高生のボランティアグループ「南子連ジュニア・リーダーズ」と連携し、2025(令和7)年4月から集いスペースの提供を始めました。以前は食事を終えたらすぐに帰る方が多かったのですが、ジュニア・リーダーズが来てからは地域の子どもたちと中高生が一緒に遊び、毎回とてもにぎやかな声であふれています。
他にも大篠小学校の総合学習と連携したり、学校で行われるお祭りのお手伝いをしたりすることもあります。私たちとしては「おせっかいな地域のおばちゃん」のような立ち位置で、できる限りの協力をしたいと思っています。そうやって様々なところと関係性を築いていければ、本当の意味で地域の子ども食堂になっていけるのではないでしょうか。
-今後の活動の展望についてお聞かせください。
大篠子ども食堂をこれからも長く続けていくことが目標です。現在の20数名のメンバーは、年齢層では20代後半から80代後半までと幅広いです。しかし75歳以上が多くを占めており、今後のことを考えると若いメンバーを増やす必要があります。今やっと子ども食堂が広く理解を得られる時代になったので、ぜひこの活動に賛同する方を迎え入れたいですね。
また、地域の子どもたちへ居場所を提供し続けるためには、ここへ来る住民の皆さんをもっと増やすことも大切です。大篠支所からなんごく南支所へ場所が移ったことで、大篠小学校から離れてしまい、以前よりも来る人が減ってしまいました。
小学校や近隣の保育施設へのチラシ配布、スーパーマーケットの掲示板での案内など、今後も引き続き地域の皆さんに知ってもらえる機会を増やしていきたいです。
-提供される料理はどれも美味しく、遊び場の提供もあって親子連れも楽しめる場ですから、ぜひ多くの方に来てほしいですね。
私たちは子ども食堂の運営に誇りを持っています。厨房での立ち仕事が体力的につらい年代のメンバーもいますが、料理が好きで子ども食堂を生きがいと感じているからこそ続けられていると思います。準備が大変でも仲間と一緒なら頑張れますし、料理をする時間がとても楽しいです。あとで反省会もかねてみんなでおしゃべりする時間も楽しいです。
立ち上げ当初から考えてきた理想の子ども食堂の姿は「地域にあって当たり前の場所」です。特別なものではなく、人々の間に溶け込んでいて「今日は子ども食堂の日だから行こう」と足を運んでもらえるような食堂であればいいなと思います。
地域の困りごとや子ども食堂に集う理由は人それぞれですから、何も気負うことなく「必要だから行く」「また行きたいと思うから行く」という形で、自然と様々な人が集まる場所になっていけたらいいですね。
-農家さん独自のつながりや、JA高知県のネットワークを活かして運営する大篠子ども食堂。取材を通じて印象的だったのは、単なる食事提供にとどまらず、地域のつながりを育む「居場所」として丁寧に運営されている姿です。
子どもたちや地域住民への温かな想いにあふれた、まさに地域共生社会を体現する取り組みだと感じました。
窪田さん、貴重なお話をありがとうございました。
記事執筆・写真:ことのは舎
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