【取組紹介Vol.8】暮らしのそばに相談窓口を。目指すは“一人で悩む人に支援の手が届く地域づくり” 「ブルークロス江ノ口薬局」の取り組み

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掲載日 : 2025/02/07

今回は高知市愛宕地区で「ほおっちょけん相談窓口」の取り組みを行う、ブルークロス江ノ口薬局にインタビューを行いました。地域の困りごとへ真剣に向き合い、高齢者をはじめとする地元住民の支えとなるべく活動する原動力について、薬剤師の入福さんに伺いました。


ブルークロス江ノ口薬局 薬剤師の入福さん

ブルークロス江ノ口薬局の取り組みについて語る薬剤師の入福さん(写真:CRAFT5 Inc.)


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ブルークロス調剤薬局
平成3年に調剤薬局をオープンしたブルークロスは、創業から一貫して「地域のかかりつけ薬局」を目指し、薬の処方だけでなく地域医療に密着した包括的なケアにも取り組んできました。「医療や社会の中に存在する問題を変えていこう」という理念のもと、薬局で患者さんと直接関わる薬剤師・調剤事務員の育成に力を注ぎ、確かな専門性と人間力で地域の医療を支える薬局運営を行っています。
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ほおっちょけん相談窓口とは
高知市ではだれもが安心して暮らせるまちを目指して、令和元年11月より「ほおっちょけん相談窓口」を開設しました。どこに相談したらいいかわからない生活に関するちょっとした困りごとを聞いて、行政・専門機関・地域のサービスなどの適切な支援につなげる取り組みです。地域の薬局や社会福祉法人などの協力のもと、令和6年10月末現在で104か所が住民の身近な相談窓口として登録されています。
高知市ほおっちょけん相談窓口(HPリンク)
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「高知型地域共生社会」では、介護や子育て・就労困難者のサポートなど、分野を超えた包括的な支援体制の整備を進めています。その実現に向けて取り組みを行う県内各地の実践事例をご紹介します。

 

地域の助け合いを再び!ブルークロス江ノ口薬局が挑む地域連携


「ほおっちょけん相談窓口」について語る薬剤師の入福さん

「ほおっちょけん相談窓口」について語る薬剤師の入福さん(写真:CRAFT5 Inc.)

 

-ブルークロス江ノ口薬局が「ほおっちょけん相談窓口」に登録した経緯について教えてください。

以前から地元の訪問看護・社協・行政・町内会などの様々な人が集まる「あたごネット」という会に参加していたのですが、そこでよく話題に上っていたのが「地域の人が困りごとを相談できる窓口が身近にない」という課題です。
住民の皆さんの中には「いきなり行政の窓口に相談するのは敷居が高い」と感じる方も多く、昔のように地域で助け合いをする体制が作れないかと、あたごネットの参加者で色々なアイデアを出し合っていました。
それが令和元年11月頃で、同時期にちょうど高知市が旭・江ノ口西・三里・一宮・春野の5つのモデル地区で「ほおっちょけん相談窓口」の取り組みを始めると聞きました。もともと、薬局が地域のハブのような役割になって必要な支援につなげる活動をしたいと考えていたことから、江ノ口薬局も「ほおっちょけん相談窓口」への登録を決めました。

 

-「地域の助け合いのハブ役になりたい」と考えて手を挙げたのですね。以前から相談窓口と似たような取り組みは、ブルークロス独自で実施していたのでしょうか。

地域のあったかふれあいセンターでお薬の相談に乗ったり、「あたごネット」のような地元の集まりでお薬に関する講話をしたりすることはありました。地域で開催している集まりで町内会の皆さんと知り合う中で、高齢者を中心に「困っていることがあるけど、どこに相談すればいいのかわからない」という声がよく聞かれていました。これまでのようにイベント的に開催するのではなく、お薬のことも含めていつでも何でも相談できる窓口の必要性を強く感じ、今回の「ほおっちょけん相談窓口」の取り組みに至りました。

 

話すだけで心が軽くなる。「ほおっちょけん相談窓口」が生む安心の輪

-実際に「ほおっちょけん相談窓口」に寄せられる相談内容にはどのようなものがありますか。

相談者は主に高齢の方と、高齢の親を持つ方々です。年齢層では50代から80代ぐらいで、江ノ口薬局近隣の病院に通う方々が多いです。例えば「自分で電球を替えようとして椅子に上ったところ、腰を打ってしまったから今は真っ暗な中で生活している」というおじいちゃんには、地元の人に頼んで電球交換に行ってもらいました。
また「最近転ぶことが増えた」というおばあちゃんは、私たちに相談したことがきっかけで主治医にも転んだことを話しやすくなったようで、その後は主治医の勧めで杖を購入したり、ご家族の介助を受けられるようになったと聞きました。
それぞれのケースに応じて地域包括支援センターや訪問看護につなぐ場合もあり、そのノウハウは「ほおっちょけん相談窓口」の薬局や町内会、民生委員・児童委員、企業や社協・行政などが集まる「江ノ口ほおっちょけんネットワーク会議」で教えてもらっています。

 

-「江ノ口ほおっちょけんネットワーク会議」について詳しく教えてください。

江ノ口地区のさまざまな活動者が集まる会合で、3ヶ月に1回開催されます。実際に相談窓口に寄せられた内容をケーススタディとして持ち寄って情報共有を行い、解決に向けた話し合いをしています。
例えばお金がなくて1日1食しかご飯を食べられない高齢者には、地域包括支援センターにつないで必要なサポートが受けられるようにした例があります。最近物忘れが増えた・近所の高齢者と連絡が取れないといった事例についても、適切なところへ支援をつなげられるようにみんなで学び合っています。また、認知症の当事者やそのご家族の居場所であり、認知症の啓発を目的とした「よしだサロン」を月1回開催しています。


認知症カフェ「よしだサロン」

江ノ口ほおっちょけんネットワーク会議が主催する認知症カフェ「よしだサロン」

(写真:CRAFT5 Inc.)

 

-相談者の皆さんからはどういった声や感想が聞かれますか。

「話を聞いてくれて良かった」とか「支援してくれるところがあるのを知らなかったから助かった」と喜んでくださる方が多いです。一度誰かに相談してみるだけでも気持ちが落ち着く場合もあるでしょうし、病院の先生や支援窓口などでも相談しやすくなる効果があると思います。私たちがハブ役として間に入ることで、地域の皆さんが気軽に困りごとを口にできる環境が作れたらいいなと考えています。

 

地域の方の健康と安心を支える薬局になるために


地域の情報を多く掲示しているブルークロス江ノ口薬局

地域の情報を多く掲示しているブルークロス江ノ口薬局(写真:CRAFT5 Inc.)

 

-地域の皆さんが相談しやすい雰囲気を作るために、入福さんが心がけていることは何でしょうか。

お薬や病気とは全く関係ない話をするようにしています。趣味の話やおすすめの化粧品の話など、患者さんに色々聞いたりこちらも話したりして、「ここでは何でも話していい」ということを伝えたいと思っています。
やはり患者さん一人ひとりのことをきちんとわかっていないと適切なアドバイスはできません。普段の生活スタイルやお悩みなど、その人のことが一つでも多く理解できて初めて「その悩みがあるなら、こうすればもっと良くなるよ」という声がけができます。
中には「こんなことまで話すのはあなただけ」という方や「何でも話しやすい」という声を聞かせてくださる患者さんもいます。お薬のこと、生活のことも含めて色々なお話ができるように日頃から目を配っていますし、患者さんが幸せになるためにできることは何でもしたいと思っています。

 

-ブルークロス江ノ口薬局は掲示板に地域の情報がたくさん貼ってあり、とても温かみのある雰囲気が特徴ですよね。

江ノ口薬局のスタッフで、掲示物や配布する資料を季節ごとに工夫しています。例えば食事の塩分量が一目でわかる掲示や、自宅で簡単にできるエクササイズの紹介など、患者さんの健康につながることを一つでもお伝えできればという気持ちで情報発信しています。
また近隣のスーパーでは買い物客向けに重いものを運んでくれるサービスがあり、そういった地域の便利情報も掲示板でお知らせするよう心がけています。高齢者は「重い荷物が運べなくて買い物も一苦労」という方も多いので、「それならこういうサービスを使ってみたら」とお知らせすることもあります。
困ったときに支えてくれる人がいることを事前に知っておくだけで、心理的負担はかなり減ると思います。そのためにも、患者さんへ日頃からこまめな情報共有をすることが大切です。一人の患者さんからお友達へ広がり、そこからまた別の方へという形で、薬局内の掲示から支援が必要な方へ情報がつながることを祈って取り組んでいます。

 

-そういった取り組みも相談しやすさにつながっていると感じます。今後も「ほおっちょけん相談窓口」の取り組みを続ける中で、何か挑戦したいことはありますか。

これからも愛宕地域で開催している様々な会や取り組みに出席して、住民の皆さんに顔を知ってもらい、相談しやすい関係性を作りたいと思っています。町内会では「あたごネット」をはじめ、地域住民や行政・各種支援団体とのパイプづくりを熱心に行っているので、私もそこへ参加してどんどん人脈を作っていきたいです。

 

 

-町内会や各支援機関と連携し、困りごとを相談しやすい場所づくりに力を注ぐ「ブルークロス江ノ口薬局」。高齢者をはじめ、地域に住む人々にとって頼れる存在でありたいという情熱が伝わってきました。入福さん、お話をお聞かせいただきありがとうございました。


記事執筆:ことのは舎
編集:株式会社CRAFT5



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