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- 【取組紹介Vol.6】子ども食堂から地域を支え、笑顔を広げたい 「子ども0円きてみい家食堂」の取り組み <前編>
今回は香美市土佐山田町で活動する「子ども0円きてみい家食堂」にインタビューを行いました。子ども食堂や地域に向けた活動の背景にある想いについて、代表の池上さんにお話を伺いました。
子ども食堂の取り組みについて語る池上さん(写真:CRAFT5 Inc.)
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子ども0円きてみい家(や)食堂(高知医療生協香美支部 組合員サポートセンター)
平成27年から、高知医療生協香美支部 組合員サポートセンターを拠点として活動を開始。当初は医療生協の組合員や地域の高齢者が集まって食事をしたり、近況報告を行ったりする交流の場としてスタートしました。その後、子どもたちの貧困や十分に食事が取れていない状態を知ったことから、平成29年4月「子ども0円きてみい家食堂」をオープン。毎月第2・4土曜日に昼食の提供を行っています。
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「高知型地域共生社会」では、介護や子育て・就労困難者のサポートなど、分野を超えた包括的な支援体制の整備を進めています。その実現に向けて取り組みを行う県内各地の実践事例をご紹介します。
地域の子どもたちに無料でおいしいご飯を!「きてみい家」の挑戦
昼食の準備をする子ども0円きてみい家食堂の皆さん(写真:CRAFT5 Inc.)
-はじめに「子ども0円きてみい家食堂」の活動概要について教えてください。
毎月第2・4土曜日の11時から13時まで、地域の子どもたちや家族向けにお昼ご飯を提供する活動を行っています。名前の通り18歳未満の子どもは無料、18歳以上の大人は一人300円でお昼が食べられます。だいたい毎回30人〜40人程度の利用があります。
コロナ禍の4年間ほどは食堂として運営できなかったため、お弁当を提供する形で活動を続けました。多い時には100食のお弁当を作ったこともあります。しかし、コロナ禍に対する社会の変化に伴ってメンバーで話し合い、「以前の食堂の形式がいい」ということで令和6年4月からはランチプレート形式での食事提供へ戻しました。
-なぜ「子ども0円きてみい家食堂」をスタートさせようと考えたのですか。
子ども食堂の活動をしている建物は、もともと医療生協の交流センターとして借りた物件です。最初は香美市の高齢化に着目し、医療生協の組合員さんにお便りで呼びかけて、高齢者20人ほどで月1回集まってランチを食べる会を始めました。この活動は今でも月1回、第4水曜日に続けていて、集まって食べるのではなくお弁当を提供しています。
その後、全国的に子どもの貧困が注目されるようになり、高知県内でも子ども食堂の取り組みが広がっていきました。そこで私たちも「子どもに目を向けた活動をしよう」ということで、平成29年に子ども食堂を始めました。最初は運営ボランティアの孫や友達のつながりから始まり、徐々に子ども同士で誘い合って来るようになって地域に広がっていきました。
青果市場や農家さんが協力。0円ランチを支える温かい輪
おすそ分けされた新鮮な野菜(写真:CRAFT5 Inc.)
-子どもたちには無料でお昼を提供しているそうですが、運営費が限られる中でどのように食材を調達していますか。
スーパーから包装に難がある食材をいただいたり、青果市場から規格外や余った野菜などを分けていただいたり、地元農家さんからのお米や野菜のおすそ分けなどでまかなっています。その他の足りない食料品や調味料、キッチンペーパーなどの消耗品は参加者の負担金や県からの補助金を使って購入しています。
最初に高齢者向けの食堂を始めたときに、医療生協のお便りで「こんな取り組みをします」とお知らせしたところ、地域の皆さんがイスや机・食器棚・炊飯器・お鍋・お皿などを寄付してくれました。スタートの時点で必要なものがほとんどそろい、資金がそれほどかからなかったのは非常にありがたかったです。
-毎回のメニューはどうやって決めていますか。また子どもたちに人気のメニューがあれば教えてください。
手元にある食材をもとにメニューを考えることが多いです。例えば今回はかぼちゃをいただいたのでポテトサラダの予定をかぼちゃサラダに変更して、いただいた冷凍の鶏肉を使って唐揚げを作ろうと考えています。2週間に1回の提供ですが、なるべく同じものが続かないように工夫しています。
子どもたちに人気なのは、やはりカレーや唐揚げ・フライドポテトなどです。ご飯を残す子も多いのですが、おにぎりにすると食べやすいようなので、子どもたちが食べてくれるための工夫も大事だなと思います。
-子ども食堂の広報活動はどのように行っているのですか。
活動を開始した頃は香美市社会福祉協議会や図書館にチラシを貼ってもらったり、知り合いを誘ったりしていました。2年目からは地元の山田小学校と楠目小学校で開催日を記載したチラシを配ってもらっています。今ではチラシを見たご家族の方が電話で予約をする形式が定着しました。
子ども食堂で広がる、世代を超えたつながりと笑顔
家族で食べに来た地元の小学生(写真:CRAFT5 Inc.)
-子ども食堂にいらっしゃるのはどんな人が多いですか。
主に小学生ぐらいまでの家族連れが中心です。近所の子どもだけで来ている場合もあります。おじいちゃん・おばあちゃんを含めた親子3世代で来る方もいて、みんなで行きたい場所だと思ってもらえていたら嬉しいなと思います。
以前は障害のあるお子さんが通うデイサービスがみんなで利用していた時期もありました。職員さんは「なかなか外食できないのでこのような場所があってありがたい」と話してくれました。残念ながらコロナ禍によって中断してしまったのですが、そんな利用の仕方もあるのでぜひ相談してほしいです。
-利用した皆さんからはどんな感想が聞かれますか。
野菜中心のおかずになりがちなのですが「家では野菜を食べないのに、ここでは食べていて驚いた」という感想はよく聞きますし、私たちも素直に嬉しく感じる声です。やっぱり他の子どもたちや大人が食べている雰囲気も大事なのかなと感じます。
基本的に家族ごとに座って食べている人が多いのですが、そこへボランティアのメンバーが声をかけて「おいしい?」などと交流する時間も楽しみの一つになっています。もともと、大人と子どもの会話があったらいいなというのも子ども食堂を始めたねらいの一つなので、今後も運営方法を工夫しながらさらに交流が生まれる場所にしていきたいです。
前編では、高齢者向けの集まりから子ども向けへの活動へと広げていった経緯と、参加者の声などを伺いました。後編では、「こども0円きてみい家食堂」と地域との温かい関わりについて詳しくお聞きします。
記事執筆:ことのは舎
編集:株式会社CRAFT5